“夢の治療法"再生医療は、「産業」に育つか 17年目の黒字が見えた、J-TEC小澤洋介社長に聞く

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――自家培養表皮「ジェイス」の損益は厳しいですが、耐えてきました。

「ジェイス」は米ハーバード大学のハワード・グリーン教授が1971年に発明した技術が元になっている。1980年代から米国では人に投与されている。われわれとしては、皮膚疾患や美容を対象にできればハードルが低かった。しかし、厚生労働省の方針としては、救命というベネフィットの大きい分野をということになり、やけど、それも重症熱傷が対象となった。

第1号製品は当初は6割が無償提供に

対象は「深達性Ⅱ度およびⅢ度熱傷創の合計受傷面積が体表面積の30%以上の患者」と定義されており、年間900人ぐらいが対象となるが、うち、500人が亡くなってしまう。山奥でヘリコプターも止まらず、治療ができない場合があり、自殺が原因によるやけどでは治療を拒否される患者さんもいるので、実際は年間100~150人にしか提供できない。

提供を開始した2009年には保険適用ができる病院の施設基準が厳しく、25しか該当せず、皮膚の枚数も20枚までとされていたので、6割を無償で提供していた。その後、2年に1度の診療報酬改定で交渉して、施設は130施設、枚数40枚に引き上げてもらい、現在では97%が有償となった。

一方、皮膚を培養する3週間の間に亡くなるケースが多いので、100人以上の注文を受けても、移植できたのは60人余り、ということになってしまう。しかも、移植できなかった製品、出荷前製造停止の費用はすべて当社が負担する。売り上げは5億円しか立たず、事業として成り立たない。

30%未満も含めれば対象の患者数は5000人になるのだが、医療財源に限りがあるので難しい。

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