しかし、早川さんの場合、単純にこのようなことを知るだけでは根本的な解決ができそうにありません。今、お子さんが直面している上記の3つの状況には、実はある種の共通した原因があるのです。
それは、「抽象的指示」をしているということです。
抽象的な指示言葉は、一見わかりやすいものの…
抽象的指示とは、具体的に行動するための内容が入っておらず、いわゆる「ざっくり」とした指示のことを言います。ここでは「早くしなさい」「片付けなさい」、そしておそらく言っているであろう「勉強しなさい」(ここでは「感想文の宿題をしなさい」)。
このような言葉は、一見わかりやすいように思えますが、抽象的指示言葉では、具体的に行動が起こせないということは、さまざまなところで現実に起こっています。親子関係だけでなく、会社の中での上司部下関係においてはもちろんのことです。
早川さんのお子さんが語った「(読書感想文の)書き方がわからない」「(気持ちを書けと言われても)わからない」と言っていますね。これは言い訳ではなく、実は、もっと具体的に方法を教えてもらいたいというメッセージかもしれないのです。
方法がわからずに具体的行動が移せないという事態に直面することは読書感想文にとどまりません。ありとあらゆる日常生活の場面で、抽象的指示をされると、言われたほうは困ってしまうという状況が起こりうるのです。さらに、言われたとおりにやっていないと、伝えた側が怒る場合もあるのですから、まるでコントです。
パワーバランスからいえば、上司部下、教師生徒、親子では上下関係があり、下の立場の者は上の立場に進言や質問はしづらいものです。それを上の立場の者は認識しておかなければならないのですが、これまた上に立つ者は、子どもへの伝え方や、部下への指示の仕方・伝え方を教えてもらったことがない場合が少なくないため、いつまでも改善しません。また自分の指示の仕方が間違っていることにも気づかない場合すらあります。
では、このような事態にならないようにするために、どうしたらよいでしょうか。
「抽象的指示をもっと具体的指示に変えていけばいい」ということになるのですが、そのためには、たとえば次のようなことを取り入れると具体的になります。
2. 「たとえば……」(特に相手が子どもの場合、子どもの経験の範囲内で)
3. 主語と述語と目的語を明確にする(特に主語がない日本語では、ときとして意味がわからない)
4. 数字を入れる(漠然とせずにはっきりと。「できるだけ早く」→「明日の15:00までに」)
わかりやすい話というのは、大方1〜4の要素が入っていますので、何となく納得がいくことではないでしょうか。
ただし、これだけでは人は動かないことがあります。確かに具体的になったことで、わかりやすくどう行動すればいいかわかるようになるのですが、子どもが積極的に動くようになるための「子どもの心理」を考えなくてはなりません。
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