乾燥地獄を乗り切る「最適な保湿剤」の選び方 低刺激や無香料ならいいわけでもない

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研究チームが特に注目したのは、アレルギー性成分の有無だ。そこでこれら174製品に、北米接触皮膚炎研究グループ(NACDG)と、米国接触皮膚炎学会(ACDS)が作成しているアレルゲンのリストに掲載された成分が含まれているかどうかを調べた。

保湿剤で最も人気が高いのはローションで、全保湿剤の売り上げの59%を占めた。次がクリームで13%、オイルが12%、バターが8%、軟膏は2%だった。NACDGによると、最もよく売れている保湿剤のうち、完全にアレルゲンフリーの商品は12%しかない。

保湿剤に最もよく含まれる3大アレルゲンは、香料、パラベン、トコフェロールだ。「無香料」と表示されている商品でも、45%は少なくとも1種類の芳香成分が含まれているという。シュによると、たとえば防腐剤と香料の両方の機能を持つ物質を使う場合、主目的が防腐剤であるなら、依然として「無香料」と表記できる。

また、「無香料」と表記されていても、臭気をほかの香りなどでマスキングする防臭剤が使われている場合もある。これは臭気を化学的に除去また香料の役割を果たし、アレルゲンである植物成分だと、シュは言う。「米国では香料の表示は悪夢だ。皮膚科医にとっても、真に無香料の商品を紹介するのは難しい」。

「低刺激性」という表示の保湿剤

「低刺激性」として売られている保湿剤も、15製品中83%がアレルゲンリストに含まれる成分を少なくとも1つ使っていた。また、174製品のうちアレルギー成分を5種類以上使っている保湿剤は24製品にものぼった。興味深いことに、アレルギー成分をいっさい含まない保湿剤の価格は、28グラム当たり平均83セント(約93円)で、「アレルギー成分を1つ以上含む保湿剤の中間値(28グラム当たり60セント)を下回った」。

さらに、ノースウエスタン大学接触皮膚炎クリニック/湿疹センターのジョナサン・I・シルバーバーグ医師によると、「低刺激性という表示の大部分は無意味だ。特定の保湿剤を頻繁かつ長期にわたり使えば、どんな人でもアレルギー反応を起こす可能性がある。商品の表示が間違っているわけではなく、人間はどんな製品にもアレルギーになる可能性がある。もともとアレルギー体質の人ならなおさらだ」。

かゆみや赤みといったアレルギー反応の初期症状は、チクチクした痛みや、焼けるような痛みに発展する可能性がある。「問題の成分に触れるたびに、アレルギー反応は激しくなる」と、シルバーバーグは言う。だから、もともとアレルギー体質の人は、定期的に保湿剤を取り替えるといいだろう。もちろん異常を感じたら、すぐに使用をやめることだ。

一般的な感作物質(アレルギー性接触皮膚炎を起こす原因物質)の入っていない保湿剤を選びたいなら、化学合成添加物や香料の含まれないものを選ぶべきだと、米国皮膚科学会は推奨している。とはいえ、これは医師にとっても容易ではない。

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