フランス男に同居する恋愛反射神経と不行儀 褒めて崇める日本人が知らない文化の実態

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――パリにも「ストハラ」があるということですね。

小津:あります。私も、私の女友達も、男友達も、路上でお尻を触られたことがあります。特に夜の外出時には、本当に警戒が必要です。パリではパンツ姿の女性が多く、私もパリでは99%パンツ姿でした。パーティではドレスアップしますが、基本的にみんな車で帰宅します。車を持っていない学生の女の子も、男の子に家まで送ってもらったり、帰宅時にドレス+ヒールから、パンツ+スニーカーにはき替えたりして、やはり危機管理はしっかりしています。

「フランスの恋人」がフランスから消える?

――マクロン内閣のマルレーヌ・シアパ男女平等担当副大臣がフランスの公共の場におけるセクハラをなくそうと法整備に尽力していますよね。フランス人である彼女が「男性は『フランスの恋人』を演じているつもりなだけだ」と断じた、否定的な発言も印象的です。それは恋愛なんかじゃなくてセクハラなんだ、という。フランス社会における、身の危険を感じるような声かけや付きまといが多いことの反映でもあるのでしょうか。

小津:そうだと思います。夜はもちろん、昼間でも、人気(ひとけ)がない場所には注意していました。私は治安のいいエリアに住んでいましたが、メトロの乗り換えをするとき、たまに長い通路に誰もいない、ということがあって。そういうときは、昼間でもちょっと走って通り抜けていました。フランス人の女友達は、夜遅い時間に1人で帰宅しないといけない場合は、絶対に誰とも目を合わさないように注意すると言っていました。

西:日本にはフランス文化を褒めてあがめる本のようなジャンルがありますが、僕はもっとフランス人やフランスを知る日本人の生の声を聞いてもらいたいと思います。以前、僕が日本の大学で講演をした時、学生から「外国人と結婚して、老後はどうされるつもりなんですか?」との質問が出て、ちょっとびっくりしました。

「若いのになんでそんな心配を?」と思いましたが、これからどこに住むにしても、何が起こるにしても、そうなったらそうなったで受け入れて自分たちがアジャストしていくしかない。異文化間の結婚というのは、楽観がないとやっていけないものです。でもハードルを跳んでみたら見えるものがあって、案外やっていけるものだと思うかもしれない。

――異なる流儀や文化を持ち寄るというのは、日本人同士の結婚でも同じことですよね。

西:それが国際結婚ということで、異文化理解の過程がよりデフォルメされて見えているんですよね。

――国と国が国境を接し合うヨーロッパの歴史とは、まさに異文化衝突と理解のクロニクル。移民をめぐる政治問題や頻発するテロも含め、フランス社会を単純に「ファッショナブル」と評してあこがれるような無邪気さは、これからの時代には許されなくなるのかもしれません。世界中の国家や文化がいまそれぞれ曲がり角に直面しているように、華やかで超然として見えるフランス文化も例外ではないのでしょう。

河崎 環 フリーライター、コラムニスト

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かわさき たまき / Tamaki Kawasaki

1973年京都生まれ、神奈川県育ち。桜蔭高校から親の転勤で大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での暮らしを経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、企業オウンドメディア、テレビ・ラジオなどで執筆・出演多数。多岐にわたる分野での記事・コラム執筆をつづけている。子どもは、長女、長男の2人。著書に『女子の生き様は顔に出る』(プレジデント社)。

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