フランス男に同居する恋愛反射神経と不行儀 褒めて崇める日本人が知らない文化の実態
小津:フランス人男性があこがれる「女性の職業ベスト10」というデータを見たことがあるのですが、ジャーナリスト、医師、写真家、アーティストなど、文化や教養度の高い、知的な職業が並んでいました。女性に知性や話の面白さも求めるからです。フランスは特に、アーティストの地位が高いですね。
西:僕は漫画家をやっているわけですが、日本で「漫画を描いてる」って言うとまず心配されるんですよ。「生計立てられるの?」とか「フリーターじゃん」なんて。でも、フランスでは漫画は十分にアートなので、カートゥーンライターは尊敬されます。漫画は「第9の芸術」と考えられていますし、ストーリーや絵などさまざまな専門家による分業体制もできあがっていますから。
――社会的な価値観がまるで違うから、産業のあり方も人間のあり方もまったく違うわけですね。ファッションや食などのうわべだけをすくい取ってあこがれたり、まねたりするだけでは「フランス的」にはなれない。もはや哲学ですよね。
フランスは不倫に寛容?
――小津さんはご著書でフランス人の恋愛事情やバカンス事情にも触れられていますね。仕事の都合で「あとで合流するよ」と妻と子どもを先にバカンスに行かせた夫が、パリに残ってほかの女性と浮気していたり、その妻も妻でバカンス先で出会った男性と浮気したり、とか。そういうのを聞くと、フランスは浮気や不倫に対してとても自由で寛容な印象ですけれど、どうなんでしょうか。
小津:フランス社会だって、浮気の推奨はしていないです。浮気なんてしないカップルも多いです。ただ、フランス人は一般的に、恋愛は弱肉強食だと思っているんじゃないでしょうか。より魅力的な異性(同性愛者の場合は同性)に出会ったときに引かれてしまうのは、自然の摂理だと。ちなみにバカンス中にするのは本気ではなく浮気(ひと夏の恋)で、パートナーにはバレないように終わらせ、離婚には至らないというパターンが多いようです。
西:気持ちが他の人に移ってしまうのは、人間だからしょうがないという考え方ですよね。恋愛感情が豊かということは、感情を隠さず伝え合うことなので、それだけけんかになることも多いんです。でもフランス人だって浮気に優しいとか、ゆるくて自由なわけではないですよ。恋愛中の浮気は絶対NGです。でも人間だから仕方ないと考え、”やらかし”に関しては寛容だということかな。
小津:フランス社会でも浮気はNGという意見に、賛成です。嫉妬深いフランス人も多いですし。“自分のパートナー”というアピールをするし、2人の世界にすぐ入るので、人前でイチャイチャしたりもします。パーティなどでは、ほかの異性を牽制するという意味もあるのかも。「油断したら、誰かに取られる」という感覚があるようです。
西:フランスは元サヤも多いらしいです。フランス人と結婚した日本人女性の知り合いがいるんですけど、夫の離婚した相手がパーティに来ると言ってぼやいていたことがあって。「前妻が2人来るんだけど、1人はまだ夫を狙ってる!」って。
――それは確かに油断のならない社会ですね(笑)。
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