フランスには日本人の言う愚妻なんていない 40代もパリジェンヌ、若さでなく成熟に価値

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パリジェンヌの定義は、フランス人でも人によって違うのです(写真:hareru/PIXTA)
2017年春、大統領選挙で世界中の注目を集めたフランス。EUの連帯に危機が起こる中、すわフランスに極右台頭かと思われたが、妥当な政治的収束をみて世界は一安心。だが次に大きな話題となったのはマクロン大統領とその妻、ブリジットの24歳差カップルだった。
元は高校での師弟関係(当時既婚者の演劇教師ブリジットと、その生徒マクロン)というスキャンダラスななれ初めも驚きだったが、それ以上に政治家のキャリアと私生活を分けて考えているらしきフランスの寛容な価値観も新鮮だ。
日本でフランスやパリといえば、とかくアートやファッションや恋愛の「お手本」とされ、あこがれを持って語られるもの。だが、それは「日本人が期待するフランス」という消費ジャンルにすぎず、現実のフランスはもっと別の合理的な価値観で動いていて、しかもいま何かの変化の渦中にあるのではないか……。
フランス人の妻を持ち、結婚生活と子育てを日仏文化の狭間の視点からユーモラスに描く日本人漫画家のじゃんぽ〜る西さんと、フランスを含む長い海外生活を経てリアルなフランス観を持つエッセイストの小津彩さんによる対談を前後編でお届けする。(聞き手は河崎環)

いつでも、どこでも女扱いされるパリ

――フランスやパリというととにかく「恋愛大国、日本も見習え」という文脈で語られます。

小津彩さん(以下、小津):フランスはよく「アムール(愛)の国」といわれますが、日常のあらゆる場所で男は男、女は女だと感じます。男性は女性をちょっとした言葉で喜ばせるのが好きで、美術館や映画館の受付の人が、女性客に対して男性の郵便局員が「あなたはキレイなので〜してあげますよ」などと、ちょっとしたサービスを加えてくれたりすることもあります。だいたいどこの機関もマニュアル対応ではなく、個人によってサービスが違うので、ストレスにもなりうるのですが。

じゃんぽ〜る西さん(以下、西):「恋愛的な空間」が特別ではないんですよね。フランスの男性は毎日うわごとのように「愛している」と言いますし、私の妻もフランス人ですが、毎朝「おはようモンシェリ」「カッコいいわ」とビズ(キス)ですよ。「あなたはすばらしい」「すごい」「あなたは私の人生の男!」とまで言われて、結婚当初は「こんな俺に……」と、ありがたいを通り越してプレッシャーにさえ感じたくらいです。

――愛されていますねえ。

西:いえ、こういうのが普通らしいんです。日常生活でも、日本人から見れば過剰なくらいに愛の言葉や賞賛の言葉を繰り返し、キスやハグでところかまわず愛情を示すのがフランス人なんです。W杯中継をスポーツバーで見ているようなときでも、得点に沸き立って、知らない人と抱き合う。僕もパリ生活で初めはびっくりしましたが、そのうちにできるようになりましたよ。

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