「養老孟司の新書」がどれも売れる5つの理由 どうして5作連続で10万部を超えられたのか
売れる理由⑤ 集中講義に参加したような面白さ
養老氏本人が正直に明かしているように、『バカの壁』に始まる4冊の「壁」シリーズはすべて「語りおろし」。編集者を前に話したものを文字に起こし、それに著者が手を加えるというスタイルである。1冊あたり、おおよそ10時間前後の時間、話を聞いているというから、大学の授業でいえば、6回分以上にあたるだろうか。一見薄い本だが情報量はかなり濃い。養老先生の集中連続講義が凝縮されている印象だ。
語りかけるようなテイスト
養老氏の場合、柔和な表情でのソフトな語り口にはファンが多い。過去の「壁」シリーズでは、聞き書きであることが奏功して、何となくあの「いい声」で語りかけられているような感じを味わえるのもよかったのかもしれない。
そして、その語りかけるようなテイストは、久しぶりの書き下ろしである今作でも引き継がれているといっていいだろう。『遺言。』は、今を生きる日本人すべてに向けてのメッセージとして書かれたものだからだ。「まえがき」にはこうある。
「なんだか本が書きたくなったのである。思えば満八十歳、ほぼ平均寿命だから、ぼちぼち死んでも当たり前の年齢になった。
それなら言い残したことを書いておこう。それで『遺言』を書くつもりになった(略)。
とはいっても先に申し上げておくと当面死ぬ予定はない。なので、この本も『遺言1・0』とでも呼んだ方がよいかもしれない」(同)
実際、養老氏は今も80歳とは思えないほど精力的に全国を飛び回っている。最近では、1週間で北海道を2往復するといった無茶なスケジュールもこなしたそうだ(さすがに少しバテたとのこと)。どうやら『遺言2・0』の登場もそう遠くなさそうである。
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