「養老孟司の新書」がどれも売れる5つの理由 どうして5作連続で10万部を超えられたのか
売れる理由① ありきたりではない論理展開
養老氏の魅力のひとつは、論理展開の斬新さだ。たとえば『遺言。』の冒頭では、こんな疑問が読者に投げかけられる。
「動物はなぜ話せないのだろうか。バカだからだろうか」
ともすれば「子供電話相談室」で聞かれそうな疑問である。しかし、この問いから次々と論理が展開していく。そして「なぜヒトは都市を作ったのか」「なぜヒトは神を作ったのか」「なぜヒトはアートを求めるのか」「なぜデジタル社会は息苦しくなるのか」「なぜ乱暴なものいいの人が増えたのか」といった大きな問いへの解答が示されていくのだ。
このダイナミックな論理展開こそが、養老氏の真骨頂だといえるだろう。そのベースとなっているのは、最新の科学から哲学、文学まであらゆるジャンルの知見である。『遺言。』の中では、脳科学から中国の故事、さらに「世界に一つだけの花」や漫画とさまざまな例がポンポンと飛び出す。80歳にしてなお強い好奇心を持ち、また講演活動で全国を回っていることが、このポップさを支えているのだろう。
もちろん、なかでも軸となっているのは、脳に関する考察。代表作である『唯脳論』(1998年)以来、脳は一貫して養老氏の関心の中心にあった。
この脳の特性から、古今東西の森羅万象を明晰に説明する。これが「養老ロジック」の醍醐味である。読者はそこに爽快感を受けるのではないか。
「ポジショントーク」と無縁
売れる理由② スタンスに無縁な自由さ
評論家、文化人、あるいはコメンテーターの多くは、政治的スタンスが決まっており、それに基づいた発言をすることが多い。簡単に言ってしまえば、「右か左か」が最初に決まっており、その集団において「正しい」とされることを発信するのだ。しかし、養老氏はこうしたスタンスからの発想を持たない。そのため最近の言葉で言うところの「ポジショントーク」と無縁なのだ。
たとえば多くの「識者」は「日本人は戦争の責任を忘れてはいけない」といった「警鐘」を鳴らすのが常である。また一部では「あの戦争は正しかった」という論者もいる。
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