瀬戸内寂聴は29歳おちゃめ秘書が支えている 寝起きに下着を見せて「かわいいでしょ?」
寂聴:まなほの文章は新鮮でね。かえって私がびっくりしたんですよ。「今の子はこういうふうに書くんだな」と思って。私はずいぶんと刺激を受けましたよ。すごく真っ直ぐな文章で。
表裏がなくってね。言いたいことが相手にちゃんと伝わる。それは一種の文才ですよね。それはすぐに認めました。
時々、黙って机の上に手紙を書いてくれるんですよね。その手紙がいいんですよ。ある時、そのまんま私の小説の中に入れてみたんです。そのまんまね。
そうしたら、みんな「あの手紙の文章、いいね」って言ってくれた。私が書いたと思っていたのね。だから、みんなに「あれ、まなほが書いたのよ。そのまま載せたのよ」って言ったら驚いていた。私の文と遜色劣らないと玄人が認めてくれたのね。
まなほ:手紙は全部取ってくれていて、その手紙を何度も褒めてくれました。どこがいいのか、自分では分からないんですけど、それがこういうのにつながって、私にしたらとても不思議っていいますか……(笑)。
ただ、感謝の気持ちや想いをぶつけていた手紙を、こういう本につなげてくれたっていうのは、とてもありがたいなと思いましたね。
寂聴:文章が素直なんです。良く見せようとか、「ここでちょっと装飾を入れよう」とか、そういうのが全くない。実に素直なんです。それがやっぱり魅力でしたね。
「瀬戸内寂聴に自分のパンティを見せた」

――寂聴先生に文章を見せるなんて、緊張しそうです。美文麗文を書かないといけないっていうプレッシャ―が……。
まなほ:私の場合は、そこまで語彙力がなく、言い回せなかったっていうのあるかもしれない(笑)。
寂聴:そうよね。面接で初めて会った時に「本は読む?」って言ったら「読まない」って言ってたもの(笑)。
しばらくしてね、いろいろな編集者の間で、まなほのことが噂になったんですよ。谷崎潤一郎の『痴人の愛』に出てくるナオミと似てるってね。
それで、私が「あなた、『痴人の愛』のナオミに似てるそうよ」って言ったら、「『痴人の愛』ってなんですか?」って。「谷崎潤一郎ってなんですか?」って。もう全然知らない。
まなほ:この前まで『細雪』のことをずっと「細い雪」だと思っていましたから……(笑)。