ひと言で言うと、伊藤さんの言葉は否定語が多いということです。たとえば、「そんな字じゃダメでしょ。もっとしっかり書かなきゃダメ」「それじゃあ、6だかゼロだかわからないでしょ。そういうのが計算ミスにつながるんだよ」「ほらほら、集中しなきゃダメでしょ」「それ違うでしょ。もっとよく問題読まなきゃ」などです。日曜日に近くで聞いていた夫は、うんざりしたそうです。伊藤さんは、言われてみると確かにそうだと気がつきました。「日頃から自分は否定語が多いけど、子どもの勉強を見ているときはさらに増えるようだ。というか、そういうことしか言っていなかった」と気がついたのです。
それから、子どもにかける言葉を変えました。否定語は極力やめて肯定語を増やすようにしたのです。たとえば、「しなきゃダメ」ではなく「するといいよ」というニュアンスで言うようにしました。つまり、「今やらなきゃダメだよ」ではなく、「今のうちにやっておくと夕飯後は遊べるよ」などの言い方です。そして、「がんばらなきゃダメだよ」ではなく「がんばってるね」や「がんばったね」を増やすようにしました。
心掛けていること
いちばん心掛けているのは、真っ先にダメなところを指摘するのではなく、まずよい部分を褒めるということです。たとえば、漢字の書き取りノートを見てダメ出ししたくなるところをグッとこらえて、まず褒められる字をたくさん探して褒めます。どうしても直させたい字がある場合も、その後で1、2個だけ直させます。伊藤さんは、本連載の過去記事「子どもを褒めない親は『見る目』がなさすぎる」が本当に参考になっていると言ってくれました。
このように言葉を変えたら、だんだん子どもの様子にも変化が出てきたそうです。4年生後半の今現在は、親子関係がすごくよくなって、子どもの勉強への取り組みも見違えるようによくなりました。
伊藤さんは「言葉って大事ですね」としみじみ言っていました。この伊藤さんの例はとても大切なことを教えてくれています。リビング学習は親子のコミュニケーションがとりやすいのですが、それが両刃の剣でもあるということです。親が肯定語を多く使えば子どもは伸びますが、否定語ばかりだと子どもは勉強が嫌いになり、結果的に学力も下がるのです。
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