SNSでは、なぜ「デマ」が一気に拡散されるのか ユーザーが騙されやすいワケではない

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だがSNSをこれほど強力なデマの媒介者に仕立て上げた要因、つまりその背後にある心理学の重要性も見逃せないと専門家は言う。これは自分がだまされるなど思いもよらない人々にとっては特に大きな問題だ。すべての人の心に潜む、しばしば無意識の心理的バイアスがSNSと相互作用を起こすことによって、デマにだまされやすい心理状態が生み出される。なのにこの問題が注目されることはこれまであまりなかった。

自分と異なる主張を無視するからではない

ネット上の「ニュース」に懐疑的な態度で向き合うことは、たいていの場合、一定のフィルターとして機能する。だが私たちの内なる偏見のせいで、せっかくのフィルターが使われない場合があることが最近の研究でわかってきた。特に、SNSのアルゴリズムによって選ばれた拡散ネタを目にした場合はなおさらだ。

ダートマス大学のブレンダン・ナイハン教授(行政学)によれば、政治的なデマが潤沢に供給され、需要も多いという時期には「フェイスブック、グーグル、ツイッターは拡散システムとして機能する。つまり虚偽の情報を流布するとともに、それを信じてくれそうな人々を見つけるのに役立つプラットフォームとしてだ」と指摘する。

まず第1に、「人々はフェイスブックを、たとえば一種の情報キュレーターとして好意的にとらえている。だが実際には、フェイスブックにはフェイスブックの動機がある。つまりユーザーがフェイスブックから目を離さないように仕向けているのだ。ずっと見続けてもらえるようなニュースや情報を選んで表示しているわけだ」と、ミシガン大学のカリーン・サイファート教授(心理学)は言う。

そういった情報選択を行えば、うそやデマが広がりやすくなる。これは拡散しやすいネタとしての都市伝説と、個々人の自動的かつ無意識的な偏見という、ネット時代以前からある2つの社会科学的要素がかかわってくるからだ。

最初のプロセスは主にデータ主導型で、SNSのアルゴリズムに組み込まれていると専門家は言う。奇妙ですぐにうそだとわかるうわさ(ヒラリー・クリントンがワシントンのピザ店を拠点に児童売春組織を運営しているという「ピザゲート」がいい例だ)が広がるのは、政治的対立だけが理由ではない(たとえうわさが出た理由はそうだったとしてもだ)。

こうしたデマが広がるのはネット上では自分と同じようなものの見方の投稿やニュース以外に目を向けようとしない人が多いからだという一般的な見方があるが、それは言いすぎだとナイハンは言う。

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