公立中高一貫校に強い塾は何を教えているか ひとり勝ち「enaの授業」からわかること

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さらに、多くの私立中高一貫校が成績優秀者に授業料免除の制度を設けている。いわゆる「特待生」だ。東京都においては、すでに私立高校の実質無償化(収入制限あり)が始まっている。おカネをかけずに私立中高一貫校に通うチャンスも広がっているのだ。

公教育にもできることのヒントが見つかる

と、まるでenaの宣伝のようになってしまったが、この記事の目的も書籍の意図も、そこではない。

ちょっと前に、中学生の約25%が教科書レベルの文章を十分に読解することができない状態にあるという研究調査結果が報道された。この国の教育の不都合な真実として、SNSなどでも盛んにシェアされていた。「このままでは未来の社会が危ない」というような論調も見られた。

しかし、中学校の教科書レベルの文章が読解できない大人はもしかしたらもっと多いかもしれない、と私は思った。

文脈や行間を読み取らず、切り取られた言葉だけが独り歩きをして炎上する。政治家は意味のわからない言葉をただ並べて、まともに質問に答えようともしない。そのことに国民も大きな疑問をもたない。

ベールに包まれていた公立中高一貫校対策の実態に迫る『公立中高一貫校に合格させる塾は何を教えているのか』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

元を正せば、教育の機能不全が原因だ。真実を読み取る力、真実を見いだす力、真実を探る力が、大人にこそ足りていない。社会の中にはこれだけ問題が山積みだというのに投票率が著しく低いことも、その証左だ。

enaの授業を見て、これは本来公教育の役割なのかもしれないと感じた。適性検査に合格させなければいけないという使命ゆえ、受検テクニック的な部分も多分に含まれていることは致し方ないと片目をつむったうえでの話だが。

客観的に問題文を読み、課題を見いだし、解決の糸口を探し、自分の考えをわかりやすくまとめる。教科書に出てくる内容だけを使って、十分それができる。そのことを実証していた。同じことが普通の小学校でもできるはずだ。

1人でも多くの小学生に、小学生のうちに実感してほしい。考える楽しさと、わかる喜びと、そして一生懸命やったからこそのできなかったときの悔しさもちょっとだけ。そうすれば、未来の社会は今より随分とよくなるのではないかと思うのだ。

おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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