美しい自然を守りたい 大塚商会相談役・名誉会長・大塚実氏④

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おおつか・みのる 大塚商会相談役・名誉会長。1922年栃木県生まれ。中央大学法学部卒業。いくつかの会社勤務の後、61年大塚商会を設立し社長。2001年に会長になり04年現職。

今年で86歳になりますが、毎日ルームランナーで30分の室内速歩を10年以上続けており、病気知らずです。4年前に会長職を退いて経営は息子に任せ、今熱心に取り組んでいるのは自然保護や社会貢献です。

 ふるさとの栃木県益子町には2億5000万円を寄付して私の名前を冠した基金を作りました。益子は陶芸の里として有名で、基金では若い窯元を対象にした融資や褒賞を行っています。ここから才能豊かな陶芸家が育ってくれることを期待しています。栃木県にはふるさと納税を利用して2億円を寄付しました。県内の小中学校に桜の植樹をするために使われると聞いています。こうしたものは生まれ育った郷里への恩返しのつもりです。

 第2の人生のライフワーク

本社のある東京の中心街を流れる日本橋川の水質浄化にも取り組んでいます。ここは幅10メートルほどの都市河川ですが、ヘドロがたまり、すこし雨が降ればにおいがただよってくるようなありさまでした。本当は人が泳げる川にしたいのですが、さすがにそれは無理でしょうから、せめて魚がたくさん住める清流にしたい。千代田区・中央区と協力して、EM菌という浄化作用のある菌を投入して川の再生を図っています。今では驚くほど魚が戻ってきました。

川がきれいになれば、船遊びもできるし、両岸の建物も川に向けて窓やテラスを設置できるようになります。都心では川の上を首都高速が覆い被さるように走っていますが、将来的にこれが撤去されれば人々がもっと川に親しむようになり、都市の魅力がより高まるでしょう。

千葉の鴨川では、棚田の保全に資金を提供しました。そのすばらしい景観に感動して保全にかかわるようになり、パワーショベルなどを寄贈しました。ほかにも静岡の熱海にある老朽化した梅園を再生するなど、いくつかの事業に取り組んでいます。これまでにこうした活動に多額の資金提供をしてきましたが、私が稼いだおカネが景観の美化に少しでもお役に立てればうれしいかぎりです。

もともと、美しいものや自然に興味がありました。旅行や出張に行っても、ほかの人が気づかないようなことに目を向けて、一人で感動したりしていました。自然は同じ場所であっても季節や時間によって違う姿を見せてくれます。まさに発見と感動に満ちています。日本の美しい自然の保護と失われた景観の再生、これが私の第2の人生のライフワークになっています。

週刊東洋経済編集部
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