神鋼改ざんの影響と「再編可能性」を検証する 中間決算は大幅な増益の見通しだが・・・

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その間、ライバルの旧新日本製鉄は2012年に旧住友金属工業と統合し、2017年3月には高炉4位の日新製鋼を子会社化した。その結果、新日鉄住金とJFEの間では売上高で約4割の2兆円強、時価総額でも1.2兆円近くまで差が拡大している。

神鋼はJFEにとって魅力的な花嫁候補に違いない。JFEが喉から手が出るほど欲しいのは、神鋼の線材だ。神鋼と言えば「線材の神戸」。自動車のエンジンや足回りに使用されるばね用線材のほか、ボルト・ナットなどに使用される冷間圧造用線材が有名だが、なかでも自動車エンジンの弁ばね用特殊鋼線材では世界トップのシェア約5割(製品シェアは神鋼推計、以下同)を誇る。一方、JFEはこの特殊鋼線材がほぼ欠落している。同社首脳が「補完関係がある」というのは、そのためだ。

加えて、神鋼はアルミ材という「宝」も持つ。同社は鉄とアルミの両方を生産する世界唯一のメーカー。飲料缶用やハードディスクドライブ用、鉄道車両用でも有力だが、最大の強みは自動車向けだ。車向けのアルミ合金材では国内のパイオニアであり、ボンネットなどに用いられる車用パネル(板)材では国内シェア約5割を誇る。バンパー用のアルミ押出材やサスペンション用のアルミ鍛造品でも国内トップを自認する。

鉄鋼業界では今、世界的な自動車の燃費規制強化に伴う車体軽量化にどう対応するかが大きな課題だ。鉄よりも比重の軽いアルミや炭素繊維の採用が増える中、新日鉄住金やJFEはハイテン(高張力鋼板)の高強度・薄肉化を軸に「鉄を究める」ことで他素材の攻勢をしのぐ構え。

これに対し神鋼は、最先端の超ハイテンで国内トップクラスの技術力とシェアを有するうえ、鉄の代替素材となるアルミ材も強い。鉄とアルミを接合する独自の溶接技術も併せ持っており、自動車軽量化時代の申し子のような存在だ。JFEが自陣に引き入れたいと考えるのも無理はない。

新日鉄住金には独禁法の壁

新日鉄住金の君津製鉄所。神鋼支援に動き出すか(編集部撮影)

当然ながら、新日鉄住金も神鋼をライバルには渡したくないはずだ。同社は旧新日鉄、旧住金時代の2002年、海外鉄鋼大手からの買収防衛策として神鋼と3社で資本業務提携をしており、神鋼とはより親密な関係にある。新日鉄住金誕生後の2014年に持ち合い株を半数ずつ売却したが、今でも神鋼の第3位株主で2.9%の株式を保有する。

今後、新日鉄住金が神鋼の支援のために追加出資や業務提携強化を行う可能性は十分ある。しかし、経営統合や子会社化となると独占禁止法の壁が立ちはだかる。「特殊鋼線材の分野は国内の高炉ではほとんどが新日鉄住金と当社。海外からの輸入もないので、独禁法の観点から難しいだろう」(神鋼幹部)。弁ばね用線材では世界でも2社で圧倒的なシェアとなる。また、ハイテンでも両社を合わせると国内では5割を大きく越えるなど、神鋼の看板商品での重複がネックになりそうだ。

10月27日、新日鉄住金の中間決算会見の席上、神鋼の改ざんについて問われた榮敏治副社長は、「残念なこと。大株主として注視している」と述べた。神鋼との提携関係は「今後も続ける」が、神鋼への支援策については「特に考えていない」と語った。ただ裏では、さまざまなオプションを検討しているのは間違いないだろう。

今後、神鋼はどのような運命をたどるのか。取引銀行や新日鉄住金の支援を受けながら何とか自主独立路線を守っていくのか、それともJFEなど他社との統合や解体によって大規模な再編に進むのか。それは改ざん問題の影響度とともに、将来を見据えた神鋼経営陣の危機感の度合いが左右することになる。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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