神鋼改ざんの影響と「再編可能性」を検証する 中間決算は大幅な増益の見通しだが・・・
神鋼は10月30日午後に今2018年3月期の中間決算を発表する。おそらく前年同期と比べて大幅な増益決算となるだろう。国内外の鋼材市況の回復に加え、不振だった中国での建設機械販売が大きく好転しているためだ。
しかし、この中間決算は改ざん発表前の今年4~9月のものであり、改ざんの影響はまだほとんど反映されていない。一方、今下期を含めた通期決算については、7月段階で最終利益350億円と3期ぶりの黒字転換を予想していたが、一気に暗雲が垂れ込めている。
「再編は一切考えていない」と語っていたが・・・
仮に今期も赤字が続いたとしても、大規模なリコールや巨額の賠償請求訴訟が起きない限り、一気に経営危機に陥るわけではない。自己資本は6月末で6960億円、自己資本比率は29.8%ある。創立112年の名門企業だけに、土地や有価証券などある程度の含み資産も持っている。
だが問題は、企業として今後も競争力を維持し、生き残っていけるかどうかだ。鉄鋼業界を取り巻く環境は生易しいものではない。世界の粗鋼生産量の今や半分を占める中国の鉄鋼メーカーが過剰な生産能力を抱え、中国国内の景気情勢次第で生産量と輸出量を増減することで世界の鋼材市況に大きなインパクトを与えている。2015年度と2016年度に神鋼が連続で最終赤字に陥ったのも、中国要因による鋼材市況暴落が主因の一つだった。
足元は鋼材市況が回復局面にあるとはいえ、来年以降は予断を許さない。製品の技術力においても、韓国、中国、台湾勢のキャッチアップは急速に進む。こうした中で、日本勢は競争力を維持するため、老朽化した製鉄所設備の改修や集約、そして将来に向けた戦略投資を続けていかねばならない。それには2020年代に向けて1000億円単位の投資が必要。その資金力を保てるかどうかだ。
2016年4月に発表した中期経営計画で神鋼は、「電力事業」で収益安定化を図りながら、鉄鋼・アルミなど「素材系事業」では自動車・航空機の軽量化ニーズへの対応を軸に成長を目指し、「機械系事業」においては圧縮機や水素ステーション向け機器などエネルギーインフラ分野を中心に収益力を強化する方針を示した。そして川崎氏は「これら3本柱があれば、単独でも十分に会社としての体を成す。(他社との統合などの)再編は一切考えていない」と断言した。
しかし、今の川崎氏に自信を持ってその言葉を繰り返すことはできるだろうか。
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