フランスの「加工写真」告知義務は、是か非か 「若い女の子のため」というが…

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保健相の言い分は一理があるようですが、少し苦しいかもしれません。フォトショップはプロだけでなく誰もが利用するアプリですし、フォトショップしないボディ写真をSNSに流している人がいるとは考えられません。商品としての写真に限定することも無理があります。インターネットは「情報を流すメディアと受ける大衆」の境界をすでになくしてしまっています。

フランス女性が太りつつあるのは事実です(パリ男女にとって「下着」は何のためにあるか)。だからといって、拒食症による健康への悪影響がフォトショップに原因があるというのもおかしな話。でしたら太く加工するのも禁止なのはいったいなぜか。裏にどんな魂胆があるのか勘繰ろうにも見当がつきません。「なんでも疑ってかかる」という哲学が好きなフランス人でしょうに、よくぞ法律になったものです。

パリコレで闊歩しているリアルモデルたちは(こちらも法律でやせすぎを制御しているものの)正真正銘、BMIも体脂肪率も低そうです。けれど「フォトショップされているから細いしキレイなのよ」という庶民の安堵感も必要じゃないでしょうか。

先ほどのパリマダは「でも、悪くない法律じゃないの、と言う人も多いのよ」と伝えてきます。ジェラシーで言っているのではなく、事実のままを見たいからなのだそうです。フランス人も変わってきたのでしょうか?

表現の自由があっていい

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たとえばダイエット商品の詐欺まがいのビフォアアフター写真などは論外にして、私はデフォルメ含めた表現の自由があっていいと思うのです。なんといっても芸術の国なのですから。人体にとって不可能な理想の体型なんて、言葉そのものがおかしいのです。それを若い女の子があこがれて拒食症となるというのは暴論がすぎます。

お化粧だって、美容整形だって、男性も女性も「そうなりたい」と思って主体的に選択したことに非難されることはありません。美しくなるのに遠慮はいらないのです。

今回のフォトショップされたCM 写真表示問題。それが若い女の子が健康になるための方策であるとすれば、フランスも陳腐になっている気がします。芸術などの思想表現への規制まで展望しているとしたら大問題です。さっさと尻尾を巻いて退場したほうがいいと思いますが、皆さんはどう思われますか?

岩本 麻奈 皮膚科専門医

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いわもと まな / Mana Iwamoto

一般社団法人・日本コスメティック協会代表理事。ナチュラルハーモニークリニック顧問医師など。東京女子医科大学卒業。慶應病院や済生会中央病院などで臨床経験を積んだ後、1997年に渡仏。美容皮膚科学、自然医学、抗老化医学などを学ぶ。現在は、パリの中心に居を構え、欧州大手製薬会社やコスメメーカーなどのコンサルタントを務める傍ら、さまざまなメディアを通して美容情報を発信中。3人の成人した息子がいる。著書は『女性誌にはゼッタイ書けないコスメの常識』『パリのマダムに生涯恋愛現役の秘訣を学ぶ』ならびにその携書版である『生涯恋愛現役』(以上ディスカヴァー・トゥエンティワン)など多数。オフィシャルブログはこちら

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