「武士に二言はない」は嘘つきの始まり? 主張を変えるのは悪ではない

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悪いのは変わった「事実」を認めないこと

ビジネスでは、首尾一貫していることが重要だ。言うことがコロコロ変わるビジネスパーソンは信用できないのは、日本人も米国人も同じだ。だが、何をもって首尾一貫していると受け取るかは、日米でかなり異なる。

意外に思うかもしれないが、米国人は頻繁に自分の意見を変える。むしろ、納得できる意見に出会えば、どんどんそちらに乗り換えるのが普通である。

その理由は、第1回で紹介したロジカルシンキングの3点セットを思い出していただければわかる。

おさらいすると、「事実」(データ)と「論拠」(原理原則)の裏付けがあって初めて「主張」に説得力が生まれる。この3点セットがロジックだ。だから、前提条件である「事実」が変わったら、「主張」を変えるのは、米国人にとってむしろ自然なことなのだ。さもないと、3点セットが成立しなくなってしまう。変えてはいけないのは、「主張」ではなく、3点セット(=ロジック)の整合性なのである。

ところが、日本人は、「武士に二言はない」の言葉どおり、最初の「主張」を変えずに首尾一貫させようとする。

そのため、当初の「主張」に対して少々都合の悪い「事実」が出てきても、その事実を解釈する「論拠」(原理原則)を変更してしまい、何とか「主張」を保持しようとする傾向がある。つまり、「主張」の一貫性を重視するあまり、ロジックの構造そのものを変えてしまうので、米国人の目からすると、「ウソつき(=ロジックが一貫していない)」に見えてしまうのである。

くだんの日本人マネジャーは、一度「できる」と言ったことは、プライドにかけて撤回しなかった。少々都合の悪い事実があっても、自分の裁量でカバーできると踏んだ場合は、その経緯をオープンにしないのだ。

たとえば、期中の目標達成率が想定より低かったとしても、なかなかそれを明かさない。最終的に帳尻合わせをする自信があるのかもしれないが、外部環境が変化して、当初の目標自体を見直さなければいけない場合も、「順調です」と報告があれば、PDCAのC(チェック)が機能しない。その結果、対策が後手に回って損害が大きくなることもありうるのだ。

本来、事実は事実としてきちんと報告すべきである。数字が未達成なら、その事実をオープンにして、関係者と検証しなければならない。未達成の原因を探ることで対策を立て、次につなげることができる。第3回で述べたように、PDCAサイクルを何度も回していれば、当初のP(仮説=主張)がどんどん変わっていくのは当然なのだ。

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