大前研一「イノベーター育成はインドに学べ」 カリスマコンサルが語る「変化に強い人材」
そうやって採用した人間の入社後のトラッキングも行う。5年経ってもまったく活躍できなかった人がいた場合は、採用時にその人物に対し高評価を与えたのは誰なのかをきちんと追跡調査するのである。なぜなら、そういう人間に採用担当をやらせていたら、会社は無駄な費用を払うことになるからだ。
JT参加の加ト吉では、留学生が活躍
グローバル人材の採用や育成に関しては、アメリカ企業は非常に恵まれているといえる。アメリカには世界中から留学生が集まり、しかも、その大半は卒業後も帰国せずに、アメリカの企業に就職することを希望するからだ。つまり、アメリカ企業は、自国にいながらグローバル人材を採用できる。
では、日本はどうだろう。日本に来る留学生の85%は中国人だ。彼らは優秀なうえに中国語はもちろん、通常、母国語に加えて日本語と英語の3カ国語を使いこなす。だから、採用してきちんと教育すれば、中国での仕事を任せられるグローバル人材に育つはずなのである。
ところが、その価値に気づいていないのか、肝心の企業が留学生を積極的に採ろうとしていないのだ。私が知っている限りでは、これを唯一上手に行っていたのが、今はJT傘下の加ト吉(現テーブルマーク)だ。
当時、香川県に本社があった加ト吉は、四国にある大学や大学院の、農学部や化学部を卒業した中国人留学生を積極的に採用すると、10年かけて業務を教えこみ、その後、中国に13ある工場に、彼らを工場長として派遣するというシステムをつくり、非常にうまくいっていた。
最初から多くを期待せず、日本人と同じように採用し、10年間にわたって日本国内で仕事をさせてから、中国に戻ってマネジメントをするという長期のキャリアパスをつくったのが、成功要因だといっていいだろう。JTもそれがわかっていたので、買収後もこのシステムを崩さなかった。
アメリカ企業のように、新卒で入社してくる留学生が社内にたくさんいる利点は大きい。たとえば、今度インドに拠点をつくるから、現地の言語や文化に通じたマネジャーが必要だとなったときも、社内を見渡せば、あるいは社内で公募すれば、すぐになり手が見つかる。
GEやIBMでも、東欧に進出するとなったら、社内にロシアから逃れてきた人や、奥さんがルーマニア出身というような東欧に縁が深い人がいくらでもいるから、グローバル化が簡単にできるのだ。
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