女性用エステで増す「男性施術師」の存在感 男性ならではのアドバイスも人気 

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男性ならではのマニアックな視点のアドバイスも得意だという(撮影:尾形 文繁)

男性ならではの視点やマニアックさも、アドバイスにしのばせる。たとえば、どう見ても細身なのにさらに「やせたい」という女性に対して、「モデル体型になりたい」という本人の意向も酌みつつ、「男性から見ると、魅力的な体形はこうですよ」と男女の視点のバランスをとる。

さらに、「やせなくとも、引き締まってみせる方法もありますよ」と、食事、エクササイズ、肌の手入れ法などを紹介するなど、ややマニアックなほどに深く知識を蓄え、対応できる範囲を広げておく。

女性とは違うコミュニケーション力

土岐氏は、「自分自身の見栄え」にも気をつけている。「体形を普通サイズに保っている。体が大きいと安定感が増すけれど、大きくなりすぎると痩身アドバイスの説得力がなくなる。筋肉がつきすぎると、威圧感を与えてしまう。逆に細くなりすぎると、痩身を目的としたお客様が敵愾心(てきがいしん)を持ってしまうおそれもある(笑)」。

清潔感があり、中性的なやわらかい雰囲気を持つ男性エステティシャンを積極採用しているという「青の家」の金澤氏も、「男性エステティシャンに注目すべきは『匠(たくみ)』ともいえる、職人気質」という。

「男性エステティシャンの応募は多いが、そもそも、生理、ホルモン、むくみ、冷えといった女性特有の体の仕組みなど、学ぶことが女性より多い。女性の職場環境で厳しいことを言われたり、女性のお客様からのときに気まぐれな反応に傷ついたり、3カ月ぐらいで『こんなはずではなかった』と辞める人がいるほどハードルの高い環境。それを乗り越えた男性エステティシャンは、コツコツと技術やコミュニケーション力を高め、プロ中のプロになっている」

今回、体験やインタビュー取材を通して一番驚いたのは、男性エステティシャンたちの絶妙なコミュニケーションの間合いだった。異性を感じさせない物腰のやわらかさ、知り合いのような気さくさ、会話のテンポのよさで、こちらもすっかりリラックスして本音トークができた。女性客が心地よさをおぼえるツボを、コミュニケーションでもおさえている。

エステティシャンの真のやりがいは、「お客様と二人三脚で、体質を改善し、生活の質を向上させるサポートをしていくこと」と話す金澤さん。少数派である、男性エステティシャンならではの技術や人間力を磨くたゆまぬ努力が、人気の秘密なのだろう。

斉藤 真紀子 ライター

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さいとう まきこ / Makiko Saito

日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者、朝日新聞出版「AERA English」編集スタッフ、週刊誌「AERA」専属記者を経てフリーに。ウェブマガジン「キューバ倶楽部」編集長。共著に『お客さまはぬいぐるみ 夢を届けるウナギトラベル物語』

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