確かに有名な21番と23番の間に挟まれた影の薄い曲ではありますけれど、幸福感に満ちた作品だと思いますね。『アマデウス』の中ではモーツァルトが皇帝の御前演奏でこの曲を弾いている姿を妻のコンスタンツェが幸せそうに見つめているわけです。おそらく映画の中で最高に幸せな時期の2人の姿を描いているんじゃないでしょうか。
その22番は、先ほど話に出たリヒテルのCDでよく聴いています。リヒテルも変わり者で幸福なものが好きだったのかもしれませんね(笑)。そういえば、20連敗のスランプに陥ったときに聴いて救われたのもモーツァルトでした。対局の前日にイツァーク・パールマンが演奏する「ヴァイオリン協奏曲第3番」を聴いて連敗から脱したのです。
それにしても『アマデウス』はすばらしい。あの映画が封切られたときに棋士たちの間でもかなり話題になっていました。つまり自分はあの映画の中のモ−ツァルトとサリエリのどっちかという話題ですね。天才か秀才かという意味です。
藤井四段は天才と秀才のどっちか
――それは興味深いですね。たとえば今話題の藤井聡太四段は加藤九段から見てどのような位置づけになるのでしょうか。
藤井さんは今のところ秀才ですね。彼が天才かどうかといったことは20歳前後になったときにわかります。彼が20歳くらいになったときに、秀才のままなのか天才になったのかがはっきりわかります。モーツァルトかサリエリかですね。ちなみに私は18歳のときに「神武このかたの天才」と言われたわけですね(笑)。
名棋士というのは、だいたい20歳前後に大仕事をしています。藤井さんは人柄がとてもいいし、ある意味余裕もありますね。私は対局中に相手の立場から戦局を眺めるいわゆる「ひふみんアイ」を行うのですが、藤井さんは少し大回りの「ひふみんアイ」をやってます。あれは、相手がいるときに遠慮して少し遠くから見ているのです。
私の場合は相手のいないときに相手の立場から見るので少し違いますが、これまでプロ棋士の中で「ひふみんアイ」を行ったのは藤井さんだけです。「ひふみんアイ」の継承者ですね。これまでの経験からいえば、100局に1回くらいは効果があるといえそうです。発想の転換であると同時に執着心でもありますね。そこからいいアイデアが生まれる可能性もあるわけです。
――なるほど藤井四段、楽しみです。「ひふみんアイ」と同時に、ぜひ「クラシック愛」も継承していただけるようにお願いします。勝利のためにはモーツァルトの「大ミサ曲」がいいとかですね。
おお、おお、それはいいですね、今度ぜひそうしましょう(笑)。
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