2017年もいよいよ終盤。クラシック界は秋から冬にかけてのコンサートシーズン真っただ中だ。今回はそんな中、静かにメモリアルイヤーを終えようとしている天才作曲家に注目してみたい。
彼の名はエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(1897~1957)。今年生誕120年、没後60年を迎えたオーストリアの作曲家だ。「20世紀のモーツァルト」と讃えられた驚異の才能は戦争に翻弄され、疎開先に選んだハリウッドで映画音楽の世界に身を投じる。その結果生まれた作品の数々は映画音楽の概念を変え、今を時めく「スター・ウォーズ」のジョン・ウィリアムズ(1932~)にまで影響を与えたことが知られている。
今再び注目を集め始めているコルンゴルトとは、いったい何者なのか。『コルンゴルトとその時代』(早崎隆志著/みすず書房)、『亡命ユダヤ人の映画音楽』(高岡智子著/ナカニシヤ出版)を参考文献にして、読み解いていきたい。
「まるでモーツァルトのような」神童の誕生
コルンゴルトは1897年5月29日、現在のチェコ共和国ブルノ(当時はオーストリア=ハンガリー帝国のブリュン)で誕生した。父親のユリウス・コルンゴルト(1860~1945)は、ウィーン最初の新聞の1つ新自由新報の音楽欄を担当する有名な評論家だった。
そのユリウスが2人の息子に敬愛する作曲家のミドルネームを与えたのはごく自然なことだった。長男のハンスはシューマン(1810~1856)にちなんだロベルト、そして次男エーリヒはモーツァルト(1756~1791)にちなんだヴォルフガングと名付けられた。ところが、エーリヒはその名をいただいたモーツァルトの再来と称されるほどの神童だったのだ。
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