ひふみんがクラシック音楽にハマったワケ 「勝ち」がみえると大ミサ曲が聞こえてくる!

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加藤九段と筆者(写真提供:サントリーホール)

――ボストン交響楽団は、以前からお好きだったと聞きました。

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小澤征爾さんが長く音楽監督を務めていらしたことから、最初に親しみを持った海外オーケストラです。そしてこれは偶然なのですが、先日俳優の石坂浩二さんとテレビでご一緒した際に音楽の話をしていましたら、なんとシャルル・ミュンシュが指揮するボストン交響楽団のCDをプレゼントしてくださったのです。ミュンシュといえば、小澤さんの前にボストン交響楽団の黄金時代を築き上げた大指揮者ですからね。これはうれしかったです。今回の来日公演では、マーラーの交響曲第1番「巨人」を聴くのが楽しみです。若い音楽監督アンドリス・ネルソンスがどのような指揮者なのかにもとても興味がありますね。

――小澤征爾さんとの最後の来日公演から18年ぶりの来日ですからね。名門オーケストラの底力を体験するのが楽しみです。さて、将棋とクラシックに共通する要素は感じますか。

強く感じますね。対局のときの緊張感とコンサートの緊張感はとても似ていると思います。将棋においては、1手でまったく景色が変わる中、つねに最良の手を考えながら指していくわけです。そこには面白さと楽しさと深さがありますが、音楽もまったく同様だと思います。

対局の前にはバッハやモーツァルトを聴きますが、バッハを聴いているとなぜか、「こうしてはいられない、何かをしなければならない」という気にさせられます。ところがモーツァルトの音楽を聴くと、明日はこのモーツァルトの名曲のようなすばらしい将棋が指せたらいいなあと自然に思えてくるのです。美術館で絵を見ることも多いのですが、「この名画のような将棋を指したい」という気持ちにはなりません。それが相性であり、音楽の持つ力でもあるのでしょうね。

「大ミサ曲」が聞こえてくると勝てる

――興味深いお話ですね。そういえば、以前拝見した文章の中に、「対局で勝ちが見えてくるとモーツァルトの『大ミサ曲』が聞こえてくる」というのがありましたが、それも今のお話につながることでしょうか。

はい、モーツァルトの「大ミサ曲」が聞こえてくると勝てるのです(笑)。予感というのでしょうか、おそらく心の状態が絶好調なのだと思います。そこで浮かんでくるのが、なぜかモーツァルトの「大ミサ曲」なのです。作曲家たちは深い考えのもとに音楽を生み出しているのでしょうし、宗教曲の場合には当然宗教への深い理解というものがあって作曲しているのでしょう。

イベントでたまたまベートーヴェンの「運命」を指揮したときに感じたのは、ベートーヴェンも私もカトリック教徒であるという共通点でした。希望を持つという共通点でしょうね。モーツァルトには元気を感じます。作曲は元気でないとできないと語っていたことを本で読みました。

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