イギリスのオックスフォード大学の研究者が興味深い研究を発表している。フィンランド、フランス、イタリア、ロシア、イギリスの被験者を対象にした調査で、どれぐらいの関係性であればどの程度のスキンシップが許されるかをボディマップで示して見せたものである。
白や黄色に近い部分は触られてもいい部分、赤は触られたくない部分、青は絶対に触られたくない部分を指す。
見知らぬ他人の場合、許されるのは手だけ
ボディコンタクトの相手が女性の場合が赤字、男性の場合が青字だ。パートナ―であれば、全身大丈夫だが、友達⇒母親⇒父親⇒姉妹⇒兄弟⇒おば⇒おじ⇒いとこ⇒知り合い(Acq= Acquaintance)⇒見知らぬ人、というように、親密度が低くなるにつれ、触ってはいけない部分が増えていく。知り合いの場合、手や腕、肩ぐらいの接触はまではOKということになるが、見知らぬ他人の場合、許されるのは手に限るということになる。
日本であれば、友達であっても、ここまで許容範囲は広くないし、全体的にもっと赤い割合が高い可能性がある。許されるスキンシップの様式は世界各国、また地域によっても随分違うが、最もベーシックなスキンシップとして、「握手」はビジネスの世界などでも多用されている。ファーストコンタクトの場であり、印象形成に大きく影響することから、米国などでは「正しい握手の方法」などが随分研究されており、イラスト付きで正しいやり方、間違ったやり方などを解説する本も多数ある。
米国の研究によると、握手によって、脳の側坐核の活動が活発化することやポジティブな印象を醸成し、信用や絆、興味を高めることが確認された。短い時間の中で、有権者とつながりを作り、アピールしていこうという候補者にとって、有権者と次々に握手を行うことは、極めて強力な支持者拡大方法ということになる。
握手そのものが、どちらが強いかを示す「パワーゲーム」の場であるとして、たとえば、国のリーダー同士の握手を分析して、その心理状態を読み解く専門家などもいる。確かにそういう視点で、スキンシップを含めたジェスチャーをさまざま観察すると、実に面白い。リーダーたちはそれぞれにそういった「見え方」「見せ方」を工夫しているが、特にウラジーミル・プーチン大統領やドナルド・トランプ大統領など「オレ様系」のトップは「強さ」「男らしさ」に徹底的にこだわっている。つい最近は、自分のほうへぐっと相手を引き寄せるトランプ大統領の握手が「変だ」と米国メディアでも随分取りざたされた。
スキンシップは単なるジェスチャーの一種ということではなく、人体に与える健康効果、心理的効果という意味では、人間にとってなくてはならない行為である。多くの研究者がその効用について検証しているが、スキンシップは人間関係に数多くのポジティブな影響をもたらすといわれている。たとえば、暴力的行為を減らす、信頼の醸成、強いチームワーク、疾病の減少と免疫力の向上、学習力の向上、健康増進など、その効果は絶大だ。米国の調査では、ハグをする人は風邪などにかかりにくくなり、かかったとしても治りやすい、ストレス耐性が増すという結果だった。
肌を触れ合うことは、愛情ホルモン「オキシトシン」の生成を促す。医療の現場でも、看護などにおいて、患者に対する”タッチング“が痛みの軽減や安心に結び付くとしてその価値が認められている。
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