小池百合子の「凄み」はストーリーを語る力だ ファクトがないときの最強弁法を知っている

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語れるほどの「ファクト」がほとんどないとき、人々に届く「物語」は実に都合がいい(撮影:尾形文繁)

小池百合子東京都知事は希代のコミュニケーターである。この連載でも彼女の用意周到な「権謀術数」(小池都知事圧勝の理由は「敵失」だけではない)や、情に訴えるコミュニケーション(小池都知事、「安全だが安心ではない」の欺瞞)、「対話力」(都知事選「小池圧勝」は"対話力"で説明が付く)、そして、絶妙な「感情のコントール」(「怒りながら叫ぶ女」はどうして嫌われるのか)などさんざん取り上げてきた。

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しかし、まだまだネタは尽きない。あっと驚くカードを次々と切って見せ、あれよ、あれよと政界再編の「センター」に躍り出た小池氏の戦法は、話題をつくり続けて、圧倒的な報道露出を獲得した米大統領ドナルド・トランプをも彷彿させる激烈ぶりだ。

並外れた「ストーリーテリング力」

そのスピード感、荒唐無稽な展開はまさに、織田信長が今川義元を下した「桶狭間の戦い」を想起させる「平成の大奇襲」。アクション映画かジェットコースターのようなスリル感、脳内唾液を分泌するようなシズル感(人の五感を刺激する感覚)をかき立てる。小池氏のすごみはそういった感覚を究極まで高ぶらせる「ストーリーテリング力」だ。

日本人は「ロジック」「ファクト」が大好きだ。雇用が〇〇人増えた、経済効果は×××億円……。しかし、「データ」で、実は人の心は1mmだって動かない。アベノミクスの効果を示す首相官邸のホームページを見てみると、そんな数字が鬼のように並んでいる。

実質GDP〇〇%成長、株価〇〇%上昇、完全失業者数〇〇万人減少といった細かい数字に「消費の拡大」「投資の拡大」といった無味乾燥で言い古された言葉。緻密にファクトを積み上げれば、人は説得できるし、わかってもらえる、そんな思い込みが日本人のコミュニケーションの最大の弱みである。

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