高齢化はデフレではなく、インフレを招く 人口構造の変化で消費は増えて貯蓄が減る

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「高齢化によって社会保障給付が膨張するが現役世代の負担増が難しく、財政の収支の赤字が拡大しており、将来的には年金積立金の取り崩しも予定されている」という問題を、現役世代が生産したGDPを、現役世代と高齢者世代に配分してそれぞれが日々の消費に使うという問題に単純化して考えてみることができる。図は高齢化による需給の変化をイメージしたものだ。いちばん左の赤い棒グラフは現役世代が生産したGDPを表している。

高齢化が進めば需給は逼迫

1960年には日本の65歳以上人口比率は5.7%に過ぎなかったから、65歳以上の高齢者が消費に使うGDPの割合は小さなものにすぎなかった(図の左から2番目の棒グラフ)。現役世代は、自分たちが生産したGDPのごく一部を高齢者の生活のために提供すればよかった。

しかし、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によれば、2060年には高齢化率は39.9%に達すると予想されている。高齢者が使用するGDPの割合は大幅に増加することになる。現役世代が高齢者に提供しなくてはならないGDPの割合は非常に大きくなる(図の左から3番目の棒グラフ)。

 「年金や医療給付を削減できず高齢者の使うGDPを減らせない一方で、現役世代も自分たちの消費水準を高く維持しようとするので現役世代の負担も大幅には増やせない」という状況のギャップを埋めるのは、大幅な財政赤字と年金積立金の取り崩しである(いちばん右の棒グラフ)。高齢者と現役世代が使っているGDPの合計は、現役世代が生み出したGDP(図のいちばん左の赤い棒グラフ)よりも「財政赤字+積立金取り崩し」の分だけ大きい。

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