日本銀行の異次元金融緩和は空回りを続けている。本連載の第35回でそう述べた。このように判断する根拠として示したのは、マネーストックが増えていないという事実だ。
このことは、最近になっても変わっていない。マネーストック残高の7月の季節調整済み前月比年率は、M2でもM3でも1%台にすぎない。6月には比較的高い伸びを示したが、7月は元に戻ったわけだ。
対前年同月比で見ると、M2で3.7%、M3で3.0%だ。これらの値は、これまでよりは高めである。しかし、2009年後半や11年11月から12年1月にかけても、M2の対前年比は継続して3%を超えていた。この程度の伸び率では不十分とされて、異次元緩和政策が鳴り物入りで導入されたのだ。しかし、状態が目立って変化したとは言えない。
異次元緩和政策の導入からすでに4カ月が経過したが、このように、金融市場にその影響は及んでいない。つまり、金融緩和政策は機能していないということだ。
マネーストック残高が伸び悩んでいる反面で、マネタリーベース残高は、日銀による国債買い上げの結果、猛烈な勢いで増えている。5月以降の対前年同月比は、継続して30%台後半という高い値だ。5月の季節調整済み前月比年率は、実に137.7%に達した。つまり、マネーストック残高の伸び率は、マネタリーベース残高増加率の約30分の1から140分の1ということになる。
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