高齢化はデフレではなく、インフレを招く 人口構造の変化で消費は増えて貯蓄が減る

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こうした単純化を使って考えた結果は、高齢者と現役世代の消費合計=国内需要が国内供給であるGDPよりも大きいことを意味しており、高齢化が進むと日本経済は需給の逼迫から物価上昇圧力が高まっていく姿が予想される。

デフレは高齢化とは別の要因による

確かに現実の日本経済は、1990年ごろから高齢化の進行とデフレ症状の悪化が同時に進んできた。しかし、このような時間的な関係を根拠に、高齢化の進行はインフレを引き起こすのではなく、デフレの原因となると結論づけてよいとは思えない。

高齢化でデフレが起こるというのは、需要と供給の関係という経済の最も基本的な考え方を使って考えた高齢化による影響とは相いれない。もちろんここで示したような話は非常に単純化されたものであり、もう少し深い検討が必要であることは言うまでもないが、バブル崩壊後の日本経済が、物価の持続的下落というデフレに陥ったのは、高齢化とは別の要因によるものだということを、強く示唆していると考えられる。

櫨 浩一 学習院大学 特別客員教授

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はじ こういち / Koichi Haji

1955年生まれ。東京大学理学部卒業。同大学院理学系研究科修士課程修了。1981年経済企画庁(現内閣府)入庁、1992年からニッセイ基礎研究所。2012年同社専務理事。2020年4月より学習院大学経済学部特別客員教授。東京工業大学大学院社会理工学研究科連携教授。著書に『貯蓄率ゼロ経済』(日経ビジネス人文庫)、『日本経済が何をやってもダメな本当の理由』(日本経済新聞出版社、2011年6月)、『日本経済の呪縛―日本を惑わす金融資産という幻想 』(東洋経済新報社、2014年3月)。経済の短期的な動向だけでなく、長期的な構造変化に注目している

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