弁護士失墜の大元凶、ロースクール解体勧告 「負のスパイラル」が止まらない弁護士業界の内情

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ロー制度はあくまで堅持 現場から遊離する日弁連

ロースクールにはすでに750億円強の国の財政支援が行われている。そのバーターで失われたのが、先述の司法研修所での給費制だ。

8月、貸与制第1期となる12年度の司法修習生211人が、給費制廃止は憲法違反だとして、全国4地裁に提訴した。「ロースクールの学費に加え、貸与制での300万円。働き始めから多額の借金を負わされる今の制度で、本当に志のある人材を集められるのか」。訴訟団事務局の野口景子弁護士は狙いを語る。

日弁連はロースクールを中核とする法曹養成をあくまで堅持すべきとの考えだ。「若い学生には、予備試験ではなくロースクールで幅広く法曹として必要な科目を体系的に学んでほしい。語学や国際法、知的財産法などの先端科目、親族相続なども勉強してもらいたい」(山岸良太副会長)。

だが日弁連執行部の意向とは異なり、現場のロースクール教育への評価は低い。新人採用時に重視するのは、学部時代の大学名と司法試験の順位だと複数の弁護士は語る。就職市場で高評価なのが予備試験合格者だ。人気の高いビジネス法務の大手事務所からも引っ張りだこだ。

予備試験の合格者数は昨年で219人、合格率3%程度と旧試験並みの難関だ。ただ政府の閣議決定を踏まえれば、予備試験合格者の司法試験合格率(現68%)とロースクール修了生の合格率(現25%)が同水準になるまで、合格者数は増加していくことになる。この閣議決定の順守は、総務省の「法科大学院の評価に関する研究会報告書」、ならびに自民党の司法制度調査会の提言でも重ねて強調されている。生まれるのはロースクールと予備試験との、対等な立場での健全な競争である。

ロースクール制度、そして司法制度改革の理念を守るため、次世代の芽を摘み、若手を疲弊させ、弁護士の価値を貶めることになっては、本末転倒だ。それはひいては国民の利益を大きく損なうことにつながる。

司法制度改革の旗を振ったある大学教授は、大増員に反対する弁護士を批判しこう主張した。「食べていけるかどうかを法律家が考えるというのが間違っている。(無償の人権・社会活動という理念で)人々から感謝されることがあるのであれば、人間、喜んで成仏できる」。

ロースクールがこのまま司法制度改革の理念に殉じて朽ちていくのなら、その「成仏」もまた社会奉仕といえるだろう。

風間 直樹 東洋経済コラムニスト

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かざま・なおき / Naoki Kazama

1977年長野県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、法学研究科修了後、2001年東洋経済新報社に入社。電機、金融担当を経て、雇用労働、社会保障問題等を取材。2014年8月から2017年1月まで朝日新聞記者(特別報道部、経済部)。復帰後は『週刊東洋経済』副編集長を経て、2019年10月から調査報道部長、2022年4月から24年7月まで『週刊東洋経済』編集長。著書に『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』(2022年)、『雇用融解』(2007年)、『融解連鎖』(2010年)、電子書籍に『ユニクロ 疲弊する職場』(2013年)など。

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