弁護士失墜の大元凶、ロースクール解体勧告 「負のスパイラル」が止まらない弁護士業界の内情
こうした需要に対応するには、司法試験の合格者数を年3000人にする必要があり、新たに設置する法科大学院(ロースクール)が中核としてその養成を担うものとされた。
04年にロースクールが開校し、06年からはその修了を条件とする新司法試験が始まった。弁護士志望者は大学卒業後、原則3年間(法学既修者コースは例外的に2年間)、ロースクールに通うことが必須となった。
ロースクールの初年度学費は平均して国立で100万円、私立だと150万円程度。また弁護士になるには、司法試験合格後に1年間の司法修習を終えることが必要だが、従来は給付されていた年300万円の給料が、12年度(65期)から貸与制に移行。多くの新人弁護士たちは、ロースクールでの奨学金と合わせて数百万円、人によっては1000万円近くの借金を負ってのスタートとなる。
就職難の深刻化進み ブラック事務所が暗躍
だが、肝心の弁護士需要が一向に膨らんでいない。
新規事件数の指標とされる、第一審(地裁)の民事通常訴訟件数は01年の15・5万件から09年の23.5万件へと一見順調に伸びている。だがそのうち6割を占めるのが、「過払い金返還請求訴訟」だった。これを除くと、事件数は01年時よりも落ちこんでいる。
法律相談の総数は01年の47万件から11年には61万件へと増えているが、有料法律相談は半減。顧問料収入も厳しい。日本弁護士連合会によれば、顧問先のある弁護士の割合は00年の80%から09年には63.5%まで減少している。
こうした弁護士の従来業務の縮小に加え、新規分野の広がりも限定的だ。「意見書」で質的に多様化・高度化する根拠として挙げられた、専門事件の件数も伸び悩む。医療関連や知的財産権関連の訴訟はむしろ減少している。成年後見関連は数こそ増えているものの、「容易な案件は司法書士や社会福祉士に回され、弁護士に振られるのは割に合わないケースばかり」(埼玉県の弁護士)だ。増加が期待された企業内弁護士は800人弱、公務員弁護士も150人弱程度にとどまっている。
6月に出た政府の法曹養成制度検討会議の取りまとめでは、弁護士など法曹有資格者の活動領域拡大を一層図るとしている。だが同会議内でも受け入れ側からは、「企業内弁護士が長期にわたり増加し続けるとは考えられない」(萩原敏孝委員・小松製作所特別顧問)「(採用増は)行財政改革推進中で困難」(清原慶子委員・三鷹市長)と否定的な声が上がる。
人員急増と裏腹に、従来業務は減少し、新たな職域拡大も望み薄。そんな逆風に直面しているのが、新人弁護士たちだ。
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