弁護士失墜の大元凶、ロースクール解体勧告

「負のスパイラル」が止まらない弁護士業界の内情

「基本書は初学者が読んでもまったくわからないものが多い。法学未修者を積極的に受け入れる建前なのに、一般的にロースクールには十分な初学者教育を行う力はない」。青山学院大学など複数のロースクールで教えた、和田吉弘弁護士は語る。

というのも、実は制度上、ロースクールの教員のうち弁護士など法曹実務家の比率は2割で足りる。残り8割は、司法試験に合格しておらず、司法修習の経験もない研究者が占めることができるためだ。特定分野の専門研究と、実務家の養成教育とでは、求められるものの差は大きい。

初学者教育の欠如に加え、ロースクールでは肝心の司法試験への対応も表向きいっさい行われない。

それは、試験の得点だけによる選抜を否定し、ロースクールを中核とする法曹養成を不可欠とした、「司法制度改革の理念」を追求すべく作られているからだ。

この理念の裏には旧司法試験対策で中核となっていた受験予備校への、研究者教員の敵愾心、嫉妬心がある。法学部の講義から受験生を奪った「主犯」であるためだ。

司法試験の要は今も昔も論文試験だが、受験生は類似問題を解いて時間内に論文にまとめる答案練習を繰り返す。これは「起案教育」として司法研修所でも行われてきた、法曹養成に欠かせない手法である。それがロースクールの授業では御法度とされてきた。理由はただ一つ。「予備校的だから」である。

「歯を食いしばって、とにかく司法試験のことはいっさい忘れて教育するように」。教育が適切に行われているかの認証を行う評価委員からこう告げられたとき、愛知大学法科大学院の森山文昭教授は耳を疑った。

同ロースクールは開設当初から起案教育を重視しており、司法試験の合格率でも上位に位置している。「起案教育は短期間で法的思考力を高め事案分析力を身に付けられる、合理的かつ効果的な方法だ。予備校で行われていたからという理由で排斥するのはおかしい」と批判する。

司法試験の累積合格率が17%と低迷する、山陰法科大学院の朝田良作研究科長は、「司法制度改革の理念に忠実でありたいと、起案教育は従来まったく行ってこなかった。それでは合格できなかった」と悔やむ。

文部科学省は司法試験の問題を教材として用いることは認めつつも、「答案をこう書けば合格しやすいといった指導は問題。受験指導中心になったら、ロースクールを作った意味がない」(幹部)というスタンスだ。そのため「授業で起案はしても具体的な添削はしてくれない。試験対策はもっぱら予備校や課外の自主ゼミ頼み」(都内の大手ロースクール生)なのが一般的だ。

教員にとって「事例問題を作成し、答案を読み、添削する起案教育は、時間と手間のかかる仕事」(森山教授)だ。大変だからやりたくない、とは言えないが、予備校的で文科省も禁じていると言えば通りがよい。「ロースクールの教授といえども、研究だけしていればいいんだ。学生が司法試験に合格するかどうかは、本人の資質と努力によるものなんだ」。和田弁護士が聞いた、あるロースクール研究科長の本音である。

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