日本人が知らないフランスで進む社会の分断 地中海リゾート地がイスラム過激派の温床に

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事前にスリなどの犯罪が多いとは聞いていたが、ブイヤベースと麗しきコート・ダジュールの港町マルセイユのイメージが少なからず変わっていったのも事実だ。

“過激派の温床”との指摘も

穏やかな日差しのもとおしゃべりを楽しむイスラム教徒の女性たち(写真:筆者撮影)

もともとマルセイユは、失業率もほかのエリアに比べて高く「移民により若者の職が奪われている」との意識も根強い。その住民意識を巧みに利用し、マリーヌ・ルペン党首率いる極右政党・国民戦線(FN)が勢力を伸ばしてきたのも、この南仏エリアの特徴と言える。イスラム系移民の増加とともにモスクも増え続け、祈る場所が不足したことから路上で祈りを捧げる姿も問題となっている。

イスラムの過激思想に染まり、ISの支配地域に渡航していった移民の若者の存在も指摘され、フランスにおける“過激派の温床”と指摘されることも少なくない。エマニュエル・マクロン首相はこうした事態に、不法移民の帰国させる措置を強化し、警察官を1万人増員させるなど治安悪化を食い止める策に乗り出している。

バス停に並んでいたのはみな北アフリカ出身のイスラム教徒だった(写真:筆者撮影)

大半のイスラム系移民は、チュニジア料理店の男性のように、生まれ育ったフランスの地で穏やかに暮らしていきたいと思っているはずだ。彼の店では、アフリカ系の移民だけでなく、地元のフランス人もおいしそうにクスクスなどの異国情緒あふれる味を楽しんでいた。

だが、一部では自分たちの置かれた境遇、貧困や差別などから鬱憤をためていく若者が少なからずいるのも現実だ。治安の悪化から、住民との間に簡単にはぬぐいきれない軋轢が生まれ、それがさらに双方の間の壁を高くするという悪循環が生まれる。一部の過激思想に走る若者の存在が、今、社会の分断を招く構造が欧州全体で広がりつつある。

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