日本人が知らないフランスで進む社会の分断 地中海リゾート地がイスラム過激派の温床に
ラスベガスで多数の死傷者を生んだ銃撃事件の凄惨(せいさん)さに隠れて、日本ではあまり報道されなかった事件がある。それは、日本からの観光客も少なくない、フランス南部のリゾート地・マルセイユで20代の女性2人が刺殺されたテロ事件だ。
主要駅であるマルセイユ・サンシャルル駅で、今月1日午後1時45分(日本時間同8時45分)ごろ、刃物を持った男が居合わせた人々を次々に襲撃し、いとこ同士の20歳と21歳のフランス人女性2人が死亡した。犯行時、男は「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫んでいたといい、過激派組織「イスラム国(IS)」が系列のニュースサイトを通じて犯行声明を出した。現在、フランス当局はテロ事件として捜査を始めている。
地中海とブイヤベースの港町が今
コート・ダジュール地方に位置する港湾都市・マルセイユといえば、思い浮かべるのは、エメラルドグリーンに輝く地中海と、その豊富な海の恵みをコトコトと豪快に煮込んだ名物ブイヤベースだろうか。実はマルセイユには別の顔がある。人口85万人とフランス第2の都市であるマルセイユは、3割以上がイスラム教徒で、フランス最大の移民の街なのだ。
この夏、マルセイユを別の取材で訪れた際、真っ先に感じることになったのは、北アフリカ系移民の多さである。そもそもマルセイユは「北アフリカの玄関口」とも呼ばれ、春には北アフリカの砂漠から「シロッコ」と呼ばれる砂混じりの風が吹く。
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