デキる人は「他人は別の惑星の人だ」と考える

ドイツ人が、自分に誇りを持てるワケ

私が1980年代にドイツに赴任したばかりの頃のことです。当時の私は、東京銀行のドイツ支社に出向していたので、日本の銀行と同じく長時間働いていました。連日早朝から深夜まで働くことも珍しくありませんでした。

ある朝、コーヒーサーバーを仕事にする女性が真っ黒に日焼けして、「おはよう。コーヒーどうぞ」と底抜けの笑顔でコーヒーを渡してくれたのです。日焼けしている理由を尋ねると、「休暇でバカンスを楽しんできたのよ」と楽しそうに答えました。

彼女のその様子を見て、「自分は何をやっているんだろう」と空しくなりました。その頃のドイツでは、オフィスにコーヒーを配りに来るコーヒーサーバーを職業とする人たちがいて、たいていは移民の方でした。その人たちの仕事はコーヒーを配るだけで、朝の1時間ぐらいで終わります。その後は別のオフィスに移動して配っているのかもしれませんが、決して高い賃金の仕事ではないでしょう。

それでもときに3週間の休暇をとって、海辺でのんびりバカンスを楽しめるのです。彼女は毎日、笑顔で社員と談笑しながら、楽しそうにコーヒーを配っていました。

一方、日本と同じで長期休暇は盆暮れとゴールデンウイークに取るくらいで、まさに 「24時間戦えますか」という状態で働きづめだった私。朝から笑顔になれる元気はありません。

自分のほうが処遇が恵まれていると思っていたのに、彼女のほうがはるかに幸せな人生を送っているように感じました。この違いは何だろう、とそのときから私はドイツという国とその国民に興味を抱くようになりました。

「あの人は、別の惑星に住んでいる」

英語ではよく「アナザープラネット」という表現をします。ドイツ語でも「Sie lebt in ihrer eigenen Welt」(彼女は自分だけの世界に入り込んでいる)という表現をします。

「あの人は、別の惑星に住んでいる」という意味で使うのですが、必ずしも相手を軽視する表現ではなく、「あの人と自分は考え方が違う」という意味合いでも使う言葉です。

ドイツは日本に比べれば階級社会ですが、「人は人、自分は自分」という意識が強いので、それぞれの階層の人が自分の人生に誇りを持って生きているように感じます。コーヒーを配るだけの仕事であっても、堂々としています。

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