妊婦さんの味方「トコちゃんベルト」の正体 あの「おとなまき」と同じ考案者だった

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母子像と渡部信子氏(写真:会社提供)

渡部社長は学校卒業後、京都大学で技官としてコンピュータ関係の仕事に従事しました。同時期、後の「トコちゃんベルト」考案者になる奥様(渡部信子さん)は、京都大学医学部附属病院産科分娩部・未熟児センターに勤務(後に婦長)しており、そこで2人は出会います。

信子さんはその後、妊産婦の多くが訴える腰痛のケア方法を模索することになります。信子さん自身、産後の腰痛には苦しんだそうです。整形外科医からは「異常なし」と言われながらも症状は改善せず、足を引きずりながらのつらい勤務を経験しました。そのため、入院中の妊産婦さんの苦しみはひとごととは思えなかったのです。

2人3脚の「トコちゃんベルト」普及活動

渡部一博社長(筆者撮影)

そんなある日、受講したセミナーで「腰痛の原因は骨盤にあり」という説明を受けて衝撃を受けます。そして、整体、カイロプラクティック、操体法などの理論技術も取り入れ、試行錯誤の末に「トコちゃんベルト」の原型を作成しました。その後、患者さんの意見を参考に素材を吟味、立体裁断も取り入れて、妊娠初期から産後までをカバーする腰痛緩和ベルト「トコちゃんベルト」旧型が完成。1995年のことでした。

それから2年後の1997年、親戚の方に社長をお願いして、「トコちゃんベルト」普及のための会社・青葉を設立しました。この頃、一博氏は、およそ10年前に遭った交通事故の後遺症に悩まされていましたが、奥様の事業の手助けにと青葉に役員として入社します。以後、2人3脚の「トコちゃんベルト」普及活動が始まります。

体を家に例えるなら、骨盤は土台。直立2足歩行をする人間にとって、上半身の重みと足からの衝撃がすべてかかる骨盤はまさに「体の要」の役割を果たしています。昔は、歩くこと、しゃがむこと、立つことが日常生活の一部で、骨盤を支えるじん帯や筋肉が丈夫でした。江戸時代、お伊勢参りの参拝者は1日30㎞程度を歩きましたし、参勤交代では武士たちに交じりお供の女性も同程度の距離を歩いたといいます。特に各藩とも財政が逼迫してくると宿泊費用を減らすため先を急いだので、距離はさらに伸びたそうです。まさに映画『超高速!参勤交代』が現実だったのです(映画では、湯長谷藩の一行は1日40㎞の強行軍でしたが)。

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