100万で横須賀の空家を買った女性の暮らし 30代女性がハマる、「生活実験」の最前線

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アップルのスティーブ・ジョブズの愛読書は『ホールアースカタログ』という雑誌だ。1960年代末から、ヒッピー文化のバイブルとなった本で、1年に1度出版された。ジョブズが言う「ステイ・ハングリー・ステイ・フーリッシュ」という言葉も『ホールアースカタログ』の裏表紙に書かれていた言葉である。

『ホールアースカタログ』のサブタイトルは「アクセス・トゥ・ツールズ」。自分の生活を自分でつくっていく道具、という意味である。家の造り方、工具の使い方、火のおこし方、家畜の飼い方、釣りの仕方、布の織り方などなど。

立花さんも畠山さんも、『ホールアースカタログ』の生活を実践しているようにも見える。この2人のように過激でなくても、冒頭述べたように、みそを造るワークショップなどがカフェで開催されることが増えてきた。ナチュラル志向、シンプルライフ志向、自分の体に入るものはできるだけ自分で作ろうという考え方が広まっている。

自分の生活を手作りするのは、当たり前だった

そもそも、自分の生活を自分でつくることは、昭和30年代以前の日本では当たり前のことだった。国民の過半数は農民であった。「百姓」とは100の仕事ができる、100の姓を持つ、という意味である。自分たちの生活に必要なものは自分たちで作り、必要なことは自分たちでする。

だから、昭和1ケタ世代の、特に農村漁村の人なら、生活実験なんて何をいまさらと思うかもしれない。そんなのは実験ではなく、昔の日常だと。

しかし高度な文明が実現された今はそうではない。文明と共存しつつ、文明のもたらした問題に気づきながら、生活の実験は行われ続ける。

三浦 展 社会デザイン研究者

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みうら あつし / Atsushi Miura

カルチャースタディーズ研究所主宰。1958年生まれ。1982年に一橋大学社会学部卒。パルコに入社し、マーケティング誌『アクロス』編集室。1990年に三菱総合研究所入社。1999年に「カルチャースタディーズ研究所」を設立。消費社会、家族、若者、階層、都市などの研究を踏まえ、新しい時代を予測し、社会デザインを提案している。 著書は、80万部のベストセラー『下流社会』のほか、『第四の消費』『日本人はこれから何を買うのか?』『東京は郊外から消えていく!』『毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代』『あなたにいちばん似合う街』など多数。

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