スタンフォードで痛感、教員はラクじゃない 米国トップスクールの教員はどんな「教育」をしているか?(前編)

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まるで小説を書くように授業を組み立てる

授業準備は、特に初めての授業を教えるときは大変だ。たとえば僕の専門であるMarket Designの授業の場合、この分野の唯一のテキストがもう20年以上も前の本なので(誰か新しい本を書いてくれないかな)、教材を一から作っていかなければならない。

著者撮影:僕の専門でもある、Market Designの教科書。僕も学生の時はボロボロになるまで読んだ。端っこがテカテカしてるのは、セロテープで補強しているため

いや、一からというのはちょっと大げさで、実際には昔教えたことのある人からもらった教材を参考にしたりはするのだけど。

そして、テキストにプラスして研究論文のうちで授業に取り上げるものを選んだりもする。

授業で取り上げる論文を選ぶなんて簡単な作業に聞こえるかもしれないが、これが結構、大変だ。

というのは、研究論文は涙がでるほど感動的なものから、言っては悪いけれど「この人なんでこんなつまんないことわざわざ書いたの?」と思うようなもの(僕も書いたことたくさんあります……)まであるので、学生に教える価値のあるものを自分の判断で選ばなければならない。

そのうえで、授業の流れに沿うような紹介の流れを考える。個々の論文は非常に狭い範囲の事柄を掘り下げているのが普通なので、授業をするためにはそこに書かれていない流れを探しだすというか、むしろ作るというか、そんなクリエイティブな作業も必要だ。

これは強いて言えば、いろんなお話(エピソード)を集めてきて小説か何かにまとめることに似ている、のだろうか。そうそう、学者が書く教科書って、そんな講義ノートに加筆・修正してできた「長編小説」であることが多い。

最近は、似た授業を何年にもわたって教えることが増えてきたので、前年の教材(の一部)を使えるようになった。もちろん毎年手直しやアップデートをするけれども、準備の手間はかなり減る。

今年は新しく大学院向けのPolitical Economy(政治経済学)を教えることになったので、今ちょうど勉強しなおしているところだ。これは僕の副専門とでもいうような分野 (いくつか論文を書いたけど、僕の専門であるMarket Designと比べると、まだ大きな成果を出していない)なので、ちゃんと勉強しなおす良い機会だと思っていろいろ読んでいる。

学生の皆さんへ:
特に大学院向けの授業は、教員が勉強したいからという理由で行われていることも多いです。そういった授業は準備が練られていなくて、良くない場合もありますが、逆に教員がすごくやる気を持っていて良い授業をする場合もあります。僕の授業、後者を目指しているのでよろしく!

 

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