スタンフォードで痛感、教員はラクじゃない 米国トップスクールの教員はどんな「教育」をしているか?(前編)

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意外なことに、「学者」は全然暇じゃない

一言でいうと、教育は時間と体力をかなり消耗する仕事だ。大学教員という職業は僕が小さい頃に想像していた「学者」のイメージと違って、ずいぶん忙しい。そんなことを日々実感している。

さて、教育にも種類はいろいろあるけれど、いちばんわかりやすいのは学生に向けた授業をすることだろう。スタンフォード大学経済学部の場合、各教員は年間2.5クラス教える。0.5というのはたとえば2年に1回教えることや、1つの授業を2人で分担して教えることを指す。

1クラスあたり、1時間50分の授業を週2回、1学期間行う。うちでは1年を4つに区切るクウォーター制が採られていて、1学期、つまり1クウォーターの授業期間は10週間だ。だからだいたいの目安として、1年間に、

約2時間×週2回×10週間×2.5クラス=100時間くらい

の授業をしていることになる。

……なんて書くと「少な! 怠け過ぎじゃね?」と思われてしまうかもしれないけれど、これは実際に授業をしている時間のみの合計で、僕ら教員はこの時間外にも授業に関係するいろいろな仕事をしているのだ。

まず毎週2時間程度のオフィスアワー。これは学生が教員のオフィスに(方針は教員にもよるが多くの場合アポなしで)質問に来ることができる時間帯である。日本の大学にもある制度だろう。

オフィスアワーは学生が気軽に教員に質問できる良い制度だけれど、教員が感じる負担は割と大きいと思う。アメリカの、特に学部生は成績を激しく気にするが、成績のことを考えると授業ごとに出される宿題の存在は大きい。それゆえのことだろう、宿題のヒントを得ようとやたらに訪問してくる学生が時々いるのだ。

もちろん良い質問も多い(そしてそれに答えることに、やりがいを感じている)けれど、質問のマナーがよくない(というかわざとやっている?)学生もいて、それが非常に効率の悪いことになってしまったり……。

ヒントを聞きに来るならいいのだけど、ほとんど「答えを聞き出してやろう」という姿勢の学生もいたりするから、ちょっと困ってしまう(これは学生が「悪いヤツ」なわけでは必ずしもなくて、アメリカでは就職活動のときに成績が重視されるので自然にそうなるのだろう)。

たとえばあるときのこと、学生2人がオフィスアワーにやって来た。2、3質問されたので回答すると、帰るのかと思いきや、とどまっている。どうしたことか、続いて別の質問をするわけでもなく、なんとその場で勝手にほかの(先ほど受けた質問とは関係のない)問題を解き始めたのだ。

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