「前原民進党」の経済政策に期待できない理由 「曖昧なアベノミクス批判」を繰り返す限界

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(1)の「新たなリーダー」については、民進党代表選は前原、枝野幸男両氏の争いだったが、代表選の動向は金融市場の材料にならなかった。2009年からの民主党政権は失敗の連続だったが、その国民の記憶はなお相当強く、「政権の看板」として重責を担っていた両氏がリーダーとなるのでは、党勢は戻らないとほとんどの国民が認識していると思われる。

もちろん、2012年に経済政策改革を掲げ、復活した安倍政権の成功をみればわかるように、(2)の経済・外交政策などの成果によっては、政治の景色は変わりうる。そこで、前原氏の過去の発言から経済政策に対する認識を確認する。

2014年の消費増税の悪影響を軽視する前原代表

ハフポスト日本版などによれば、経済政策については、前原氏は8月21日に次のように述べている。「(アベノミクスについて)問題だったのは労働分配率が低下して、賃金は上がらないのに企業の内部留保だけが増えたこと。賃金が上がらないのに、円安で輸入物価が上がり、実質賃金がマイナスになり消費が落ち込んだ。GDPの6割は消費だ。アベノミクスは企業を儲けさせ、個人を細らせ、結果的に消費を落ち込ませて景気が低迷した自業自得の政策だった」。

個人消費は2013年に大きく伸び、その後2014年から落ち込み2015年まで停滞、増税ショックが和らいだ2016年に再び伸び始めた。この経緯をみれば、消費増税が個人消費の落ち込みに及ぼした悪影響は明らかである。一方、金融緩和政策の支えで、個人消費失速があっても安定的に雇用は伸び続けており、緩やかながらも家計全体の所得は増え続けている。以上の事実、メカニズムについて新しい民進党執行部は十分理解していないとみられ、何を指して「自業自得」といえるのか、筆者には理解不明である。

また消費増税に関して8月7日に次のように述べている。「消費税については『一個人の議員』としては、よほどの経済の腰折れがなければ、2019年10月に消費税増税をするという考えだ。特に、民主党政権時代、(消費増税が盛り込まれた)『税と社会保障の一体改革』を、党政調会長として進めた者として、それを進めていきたい」。

2009年の民主党政権当時から経済政策に一貫性がなかった(消費増税なしの公約が覆され消費増税が決定された)ことを踏まえれば、民進党の経済政策は依然流動的なのかもしれない。ただ、この認識を踏まえれば、前原氏は2014年の消費増税の悪影響を軽視しているとみられる。仮に前原民進党がこの方針を保てば、来年にも想定される衆議院総選挙において、安倍政権が「消費増税凍結」を掲げて選挙に挑む可能性がやや高まったといえる。この意味で「安倍政権にとって追い風」になると筆者は考える。

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