「1強体制」固める中国・習近平の思想と対日観 激しい権力闘争の中、10月に党大会を迎える
王岐山は共産党機関紙『人民日報』(7月17日付)で、政敵摘発後も「巡視工作を継続する」と言及している。「巡視」とは「幹部の身体検査」であり、「身体検査」を受けるべき対象の大物幹部は、昨今のリストの中にまだ多数残っている。
習氏もそうした汚職摘発自体には異議はないので、今後も「反腐敗キャンペーン」は続けるだろう。習氏の3期目の狙いが実現すれば、王氏については、69歳定年のルールを破って政治局常務委員に留任させるか、「反腐敗キャンペーン」を継続したい習氏が別のポストを用意する選択肢もある。
他方、習氏自身は少なくとも残り5年の任期を有するのだから、現時点で「ポスト習近平」を語るのは早すぎる。むしろ「ポスト習は習」と言うべきだろう。党中央政治局委員ポストである重慶市党委員会書記として独自の勢力を作っていた薄煕来を追い落としたのは胡錦濤前主席だった。後任の孫政才は、その後の混乱の後始末のために習氏が起用したものだった。
また、孫政才が拘束されたからといって、同じく習近平派でもない胡春華・広東省党委員会書記(54)を後継者とみなすことはできない。胡氏が8月30日付の『人民日報』に寄稿した文章で、習氏支持を鮮明にしたこと自体、習派ではない彼の立場を物語っている。その意味ではむしろ、孫政才の後任であり、習氏に近い陳敏爾・重慶市党委員会書記(56)の党中央政治局常務委員会入りとその後の動向を注目すべきだ。
「五位一体」と「4つの全面」の推進とは何か
また、8月31日の政治局会議では、『新華社通信』が伝えたように、「習近平総書記の一連の重要講話の精神と党中央の治国理政(国政)の『新理念、新思想、新戦略』を貫徹する」と強調した。つまり、これを理論化して「習思想」として党規約の中に盛り込むことができるか否かも焦点だ。香港紙『明報』なども、このことを今春から報じていた(3月22日付など)。毛沢東思想、鄧小平理論に続く「権威付け」の意味合いを持つ「習思想学習運動」は、7月末から、全国の党組織で展開されている。それが実現すると、習氏は江沢民、胡錦濤を超えることになる。
ただし、問題は「習思想」と呼ばれるものの内容そのものだ。『新華社通信』(2017年7月27日)によると、習氏は7月26日から27日、「習近平総書記の重要講話精神を学習し、第19回党大会を迎える」省都主要指導幹部専門課題班を開催した。そこでは、習氏の重要講話が学習対象とされた。
習氏はこの重要講話のなかで、「我々は、(中略)新しい考え方・新しい戦略・新しい措置を提起し」、引き続き「五位一体」(経済建設、政治建設、文化建設、社会建設、エコ建設)の全体的配置と、「4つの全面」(小康社会の全面的完成、改革の全面的深化、法に基づく国家統治の全面的推進、全面的で厳しい管理)の戦略的手配置の推進を呼びかけた。