中国海軍に対する日本政府の抗議は筋違いだ 「抗議」ではなく「仕返し」をする必要がある

拡大
縮小
6月9日に尖閣諸島の接続水域を通過したジャンカイI級フリゲート艦(出所:WIKIMEDIA COMMONS)

東シナ海における中国海軍の行動が話題になっている。6月9日、中国軍艦が尖閣諸島の接続水域を通過し、15日には沖永良部島の領海部を通過した件だ。

これに対し日本政府は即座に抗議した。その内容は「日中間の緊張行為を高める」といったもの。日中は領土争いを抱えており、安全保障の分野では対立している。この状況で中国海軍の行動は挑発であるとするものだ。

だが、日本の立場からすれば抗議をするべきではなかった。事件の本質は尖閣を巡る一種のゲームにおけるルール違反である。それであれば、中国が以降のルール違反を躊躇する対応、つまり「抗議」ではなく「仕返し」をするべきであった。

こう書くと過激に感じるかもしれないが、決してそうではない。「抗議をしたことの問題点」と「仕返しを行うことの利点」を順を追って説明していこう。

2件とも法的にはまったく問題なし

まず承知すべきは、今回の中国軍艦の行動は完全に合法である、ということだ。9日に中国軍艦が通過した尖閣接続水域は、どこの国の船舶でも自由に航行し、あるいは漂泊もできる。軍艦であれば軍事的な陣形を組み、航空機を発着し、潜水するといった軍事行動も自由である。

接続水域の性質は、ほぼ公海だ。日本は自国との出入国、関税、環境汚染対策といった権利があるものの、それ以外はなにも主張できない。つまり、日本は中国軍艦の行動に何も言えない。尖閣諸島が日本の領土であったとしても、日本は中国軍艦の今回の通過を「接続水域である」ことを理由に文句は言う資格はないのだ。

15日の沖永良部島の領海通過も完全に合法である。報道されているように今回の通過は「無害通航」である。これは領海であっても沿岸国に不利益を与えず、遅滞なく通過するかぎり自由に航行できる、というもの。日本は領海における無害通航を世界中の商船・軍艦に認めている。

次ページ日本の領海内における航行は完全に自由
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT