米国のオバマ前大統領によるアジアの「リバランス(軍事力の再編)」の有効性に疑問を持っていたアジアの人々は今、トランプ政権がオバマ政権に比べアジアの利益に対して注意を払わなくなり、中国に対してより敵対的になり、アジア地域の平和と繁栄の維持に関心が低そうなことに懸念を抱いている。
米国の政策が変わるかどうか、変わるのであれば、どのように変わるかの兆候をつかもうと、はやる思いで待ち構えており、最悪の可能性に対してすでに準備を始めている。そこまでするのは、大統領選挙中にトランプ大統領の「やり口」を見て、最悪なことが起こる可能性を排除できないと考えたからだ。そこで今回は、米国が対中関係において期待されている役割について考えてみたい。
過去の政権が置かれた状況と違う
中国との多面的な関係をコントロールすることは、トランプ政権が直面している最も重大な外交政策課題といえるだろう。これには、アジア太平洋地域の安定と安全、5000億ドルを超える2国間貿易、北朝鮮の核兵器の抑制、国際連合内および国連を通じての多国籍問題への米国の対処能力が含まれる。しかし、トランプ大統領による選挙中の言動が、米国内外で恐怖と期待を高めてしまったことから、上記の問題への対処は以前より複雑なものとなっている。
過去10回の米大統領選と就任後の状況を見ると、選挙活動中の大統領候補者の鋭い発言は、米国の利益と実務的な要素を鑑みたより現実的な政策に置き換わるというのがリチャード・ニクソン大統領以降お決まりとなっている。しかし、今回は違うだろうし、違わなければならない。なぜなら、トランプ政権が置かれている状況は、過去とは異なるからだ。
ではいったい、何が違うのだろうか。1つは、中国が変化したことである。トランプ政権以前の政権が向き合っていた中国は、自信に満ち、注意深く、予測可能な国であった。しかし、経済的成長の減速や、中国政府に対する国民の不満の増大、政府の正当性を維持するための社会統制とナショナリズムに対する依存の高まりによって、中国は以前ほど自信に満ちていないうえ、予測もしにくくなっている。中国は発展しながらも、よろめき始めているのだ。
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