トランプ政権が中国に「やらせるべき」こと アジア諸国は何を期待しているのか

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2つ目の違いは、米国のビジネス界の中国に対する考え方だ。過去の大統領選後には、ビジネスリーダーたちは次期政権の首脳に対してすぐに、中国との関係悪化はビジネス上、または、米国の消費者にとって好ましくないということを伝えてきた。

米国が中国に対する基本方針を維持することを、最も効果的に後押ししてきたのは彼らだが、過去数年間の中国の行動(知的財産の窃盗、責任の不履行、新産業における他国企業の締め出しなど)は、こうした主要な「後援者」を遠ざけてしまった。いまやビジネスリーダーたちは、方針を維持することより、中国政府に圧力をかけることを求めかねない状況にある。

3つ目の重要な違いは、アジアの人々、そして米国人の多くが日中関係を、発展途上の中国と、落ちゆく米国における避けられない優位性競争ととらえていることである。アジア諸国はこの「ライバル関係」を望むと同時に、恐れてもいる。望む理由としては、双方の力の均衡が保たれることによって、アジア諸国の安全保障と経済的利益を追求する機会が得られることが挙げられる。

アジア諸国が恐れていること

一方、恐れるのは2つの大国が衝突し、その板挟みになる可能性だ。多くの国は、地域の安全と繁栄の脅威となっているのは中国だと見ており、米国政府に、自分たちの国の利益を阻害しかねない方向に向かう出来事の発生を防ぐことを期待している。しかし、米国政府がこの「押しつけ」に対応し続けられるかどうかについては、疑念をあらわにしている。アジア地域の同盟国とパートナーの信頼を維持し続けるには、米国は、中国のいかなる「動き」に対しても迅速に反応しなければならないというのが、アジアや米国の有識者たちの共通した考えだ。

米国による中国との付き合い方や関係性が、アジアにおける他国からどのように見られているかは、実際の米国の行動やその成果と同じくらい重要である。同地域における米国の印象を改善し、影響力を保つには、この地域の住民の利益を危険にさらすと見なされる行動を起こして解決を示すよりも、慎重さを示すことが重要である。

次なる課題は、米国のビジネス界が抱いている懸念への対応だ。中国は知的財産の窃盗やサイバー攻撃、技術移転や製品のローカル化などにおいて法外な振る舞いを見せており、その責任を問わなければならない。今後、多くの米国企業が中国での事業展開を凍結、あるいは減少させるだろうが、中国政府はこれを中国政府の行動に対する反応ではなく、米国の政策に対する反応だととられることが予想されるため、米国はうまく立ち回らなければならない。

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