トランプ政権が中国に「やらせるべき」こと アジア諸国は何を期待しているのか

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投資協定の締結は、米国のビジネスを助け、米国が中国との関係を深める意思があることを示してアジア諸国安心させるだけでなく、中国に対して構造的・法的な面のさらなる改革を促すきっかけとなるだろう。

中国の軍事的増強や東・南シナ海における積極的な活動、海上領域において何を求めているのかについて、中国政府が意図的にあいまいな立場を示していることに対して、多くのアジア諸国は懸念を抱いている。こうした動きに対して米国が迅速かつ強い行動を起こさないとなれば、それは米国が同地域を中国に「譲った」証拠であり、もはや信頼できるパートナーではないと考えられる危険性もある。

中国にも「責任」を負わせろ

国内問題が山積していることや、米国の意図に対する深い疑念により、米国政府が出したアイデアに中国が好意的に反応する可能性は低い。しかし、だからといって、米国政府が提案をやめる必要もない。少なくとも、アジアと中国のエリートたちに対し、米国は中国を孤立させたり、阻止したりするのではなく、できるかぎり多くの地域的・世界的な構造に加わらせることを目指していると表明すべきだろう。

中国は頻繁に「重要なテーブル」で席を確保することを要求しているが、それに伴う責任を引き受けることは渋ってきた。中国もアジアの他国と同様、同じ取引条件を与えられるべきだが、同時にそれに伴う責任も果たしてもらわなければならない。

過去の中国政府による国際的責任の順守と履行は、ひいき目に見ても不十分だった。トランプ政権は、こうした責任について中国の指導者たちに念を押すと同時に、米国政府による期待を明確にするべきである。これには、知的財産を守ることや、知的財産の窃盗は犯罪であると見なすことも含まれる。そのためにも、米国政府は、知的財産の窃盗が行われたと疑われる商品や、窃盗行為を行っている企業の米国市場へのアクセスを規制する法整備を進めるべきである。

トーマス・フィンガー スタンフォード大学教授

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Thomas Fingar

APARC特別研究員で元米国国家情報会議議長。中国の外交戦略の研究に従事しており、同分野での優れた研究で知られている。

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