それから米国。中西部では高温により山火事が起きている。そしてハリケーン「ハービー」だ。9月分の経済指標では、メキシコ湾岸地域の製造施設の生産下振れに対して、自動車の買い替え需要が押し上げ要因となる可能性がある。いずれも短期的なものだが、季節要因と重なると統計に歪みをもたらし、米国経済の実力をわかりにくくさせるだろう。気象はやはりワイルドカードだ。
気象分析会社米アキュウェザーは被害額を1900億ドルと見積もった(2005年の「カトリーナ」は1600億ドル)。これは米国GDPのおよそ1%に相当する。5日から再開する米議会では、緊急事態管理庁(FEMA)の基金へ補充するための、緊急救済資金の採決を行う見込みだ。救済優先で政府閉鎖の可能性は低下しつつあるが、それでもさらなる被害拡大はないか、米議会の審議進捗を見守る必要はありそうだ。
スターバックス指数で見るとユーロ高は一服
最後に、通貨ユーロについて触れておきたい。8月29日にユーロは一時、約2年半ぶりの高値となる1ユーロ=1.2ドル台をつけた。ユーロ高は当初、5月初旬にフランス大統領選挙でエマニュアル・マクロン氏が勝利したことによる政治安定期待がきっかけだった。その後、マリオ・ドラギ総裁の6月27日のECB(欧州中央銀行)年次総会でのタカ派発言により、緩和縮小観測が急速に高まった。場所にちなんで"シントラの一撃"と比喩されたが、シントラはポルトガルの首都リスボン郊外にある避暑地だ(筆者は初めて訪れたが、涼しくて王宮と森の散策は快適だった)。
7月20日のECB理事会後の会見で、ドラギ総裁は市場の混乱収拾のため、慎重な言い回しで自ら幕引きをした。量的緩和の縮小について「議論は秋に行う」「秋の決定では、まず何よりもインフレを注視する」と述べた。ジャクソンホール会合での3年ぶりの講演では、ユーロ高を懸念する発言がなかったことから、ユーロ高は持続した。さらなる理由として、米国が景気回復の成熟期にあるのに対して、欧州の景気回復はまだ若い。景気のベクトルの強さから見れば、中期的なユーロ高はまだ筋が通る。
それでも、出口について早く語り過ぎると、意図せざる通貨高や金利上昇を招き、実体経済にも悪影響を及ぼしかねない。9月7日のECB理事会では、資産買い入れペースの変更を示唆する可能性は低いとみる。注目はECBスタッフの物価見通しの修正度合いと、ドラギ総裁が会見でユーロ高懸念に言及するかどうかだ。慎重な構えと市場が受け止めれば、緩和縮小決定が先送りされるとの見方で、ユーロ高は一服することになろう。
最後に、筆者による現地の調査結果をお届けしたい。ポルトガルのリスボンでスターバックスの価格を確認。カフェラテのスモールは、2.6ユーロだった。現在、東京で同じ物を買うと330円。スターバックス指数にすると、日欧で比較した購買力(簡便法)は330/2.6=126.92。足元のユーロ円は130円台の推移であり、ほぼ近い妥当水準のように見える。スターバックス指数からも、ユーロ高はこの程度で一服ともいえそうだ。
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