前回コラム「ゴルディロックス相場は夏バテするのか」で、筆者は「8月相場が大きく動くとすれば、スケジュールにはない突然の地政学リスクの高まりや、想定外の日米政局に振り回されるケースではないだろうか」と指摘した。8月8日、静かな米株サマーラリーを止めたのは(8日のNYダウは11日ぶり反落)、北朝鮮リスクの高まりだった。17日にはバルセロナでテロが発生し、リスク回避の動きが加速した。
その一方で、22日にトランプ大統領が「政府閉鎖」を発言したことをきっかけに、米予算審議と9月末の米国の債務上限引き上げ期限が意識されるようになった。結局、2017年8月相場は、地政学リスクとトランプ政権に振り回されたといえるだろう。過去の事例やアノマリーは、やはり示唆に富むと痛感させられる。
FRBはまだ弱気になっていない
9月といえば、米国で新学期が始まる月だが、歴史的なイベントやFRB(米国連邦準備制度理事会)の新たな政策決定により、相場は波乱含みとなる印象が筆者には強い。誰しもが思い浮かべるのは、(1)2001年9月11日の米国同時多発テロの発生(いわゆる9.11)、(2)2008年9月15日のリーマンショックの2つであろう。
(1)との関連では、今年も地政学リスクがくすぶり続けている。当面は日米韓の連携で、北朝鮮への経済制裁強化が見込まれる。しかしながら、平和的な解決の落としどころがいまだ見えず、リスク要因として残り続けよう。(2)では、市場に優しいFRBの政策運営が、米株などのリスク商品の価格上昇を支えており、金融の不均衡を懸念する声がある。新たなバブルの芽を摘んで、利下げの「のりしろ」を作っておくため、FRBが金融政策の正常化を早めに進めたい意向は変わらないだろう。
1日発表の米8月雇用統計を踏まえても、FRBは9月に再投資政策の縮小を決定し、12月に利上げを進める軌道に乗っていると判断するのではないか。市場では、12月の利上げ観測が後退(3割に低下)し、利下げ予測が2%の状況にまでなったが、この時点で決め打ちするのは、時期尚早と考える。12月までまだ3カ月もあり、米議会の協議の行方、ハリケーンの影響など多くのイベントが控えている。利上げは物価動向次第だろう。今後のデータで確信を深めたら、FRBは今年3月時のように(FOMC<米国連邦公開市場委員会>開催の2週間前だった)市場に織り込ませていけばよいと考えて、今は焦っていないと思われる。
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