『ハイ・コンセプト』『モチベーション3.0』等がベストセラーとなった米国の作家、ダニエル・ピンク氏。ビル・クリントン政権下の補佐官を経て、1995年から1997年までアル・ゴア副大統領の首席スピーチライターを務めた人物です。当方とは同い年の1964年生まれ。そんなピンク氏と面会したのは2011年秋。都内某所でした。
「セールスに関する書籍を書いている。話を聞かせてほしい」
と、都内の某会場で日本独自の営業スタイルについて数時間インタビューを受けました。接待や根回し、あるいは売れる営業の成功パターンなど、いくつものテーマで質問を受けました。その回答に約2時間、ついでに当方からも米国におけるセールスの実態などを質問。予定時間を大幅に超える盛り上がりであったと記憶しています。あれから2年近くを経てピンク氏の新刊、『人を動かす、新たな3原則 ~売らないセールスで、誰もが成功する~』が発売されました。本書でセールスに必要な特質は、
Attunement ── 同調
Buoyancy ── 浮揚力
Clarity ── 明確性
この3つの要素が必要である……と分析されています。インターネットの登場で買い手のほうが売り手よりも情報を持っていることすら珍しくない時代。そんな時代のセールスの「あるべき姿」を再確認できる1冊です。ちなみにamazonなどの宣伝文句では
《相手を説得したり、容認を求めたり、あるいはなにがしかの資源(リソース)と引き換えに利益を提供したりしている。つまり、現代人は誰もがセールスパーソンなのだ》
こううたわれています。なんと対象読者を「営業職」だけでなく「すべてのビジネスパーソン」に設定。これまで営業(セールス)に関する書籍は営業職のために書かれたものばかりでした。そこでピンク氏は「ありそうでなかったテーマ」に切り込んだのかもしれません。ただ、読みながらひとつ疑問が湧いてきました。それは
「果たして非営業職でも、営業に関心があるのだろうか?」
ということです。日本のビジネスパーソンは、
営業職→「営業スキルが求められる」
非営業職→「営業スキルが求められない」
と認識しがちだと感じます。事実、取材してみると非営業職=管理部門で勤務している人からは「営業的スキルなんて不要」と決めつける声がたくさん集まりました。たとえば、専門商社の経理部で勤務しているGさん(35歳)は、
「管理部門だから営業はしない。営業スキルの必要性は感じない」
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