清水建設が開発、津波避難ビルの威力 短工期、低コストで南海トラフ地震にも対応へ

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清水建設が開発したフレーム・シェルター。いちばん上が避難所となる

清水建設は、8月29日、津波から人命を守る避難ビル化の改修方法を開発した。短工期・ローコストを武器に工事の受注を目指す。

次の大地震では最大34メートルの津波も

津波の衝撃が非常に大きいことは知られている。一見たいしたことのないように思える高さ30㎝の津波でも「流れの速さが秒速1.3メートルあると、人は身動きがとれず避難することすらできなくなる」(長谷部雅伸・清水建設技術研究所主任研究員)。高さ15メートルの津波の衝撃は、2万キロニュートンを超える。これは2万トンの物体が重力加速度でぶつかってくるようなもので、地震の力の3倍にもなる。さらに衝撃だけではなく浮力も加わるため一筋縄ではいかない。

近い将来発生すると推定されている東南海トラフ大地震。内閣府の報告によれば、最大34メートルもの津波が押し寄せてくる場所がある。また、静岡から四国南岸地域までの大半のエリアでは高さ5メートル以上の津波が30分以内に押し寄せ、なかには10分以内の地域もある。伊豆半島や東海沿岸部では10メートル規模の津波が30分以内に来襲するところも非常に多いと想定されている(内閣府南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ第一次報告より)。

避難指示が出たら即座に避難できる場所が必要だ。しかし、沿岸部に多数の人が避難できる高い建物は案外少ない。学校をはじめとする公共の建物でも、2~4階建ての建物が4分の3を占めており、避難場所として高さが足りない可能性がある。

また、現在の建築基準法に定められている建物の強度は、地震動に対するものであり、津波に対する強度の検討は既存の建物ではほとんど行われていない。建築物は、土台となる基礎部分と上もの(建物部分)に大別されるが、乱暴な言い方をすれば、基礎部分に上ものが乗っているだけ。地震動には強いが、津波のような横からの衝撃には弱い。

近くに高台や高層ビルのない平野部では、数少ない避難場所となる学校や公共施設なのに、それが津波で倒れてしまっては元も子もない。だが、建て替えるには費用がかかりすぎ、窮迫する地方財政の中で対策自体が難しいケースも多い。

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