絶対にゆるまないネジはなぜ売れ続けるのか 町工場のエジソン社長は謙虚に学び続ける

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こうした努力により、ハードロックナットは瀬戸大橋のような巨大架橋で採用され、さらに日本一高い東京スカイツリーでも受注が決まりました。当時スカイツリーは世界中から注目され、振動試験ほかさまざまな試験が慎重に実施されましたが、その結果、ハードロックナットが最高の評価を得たのです。

実績の積み重ねにより、海外でも英国鉄道での大量受注、台湾高速鉄道や中国高速鉄道での採用につながりました。まさに国際的なロングセラー商品となっているのです。 

「たらいの水の原理」とは何か

今でも、朝は8時に来て帰りは最後、という若林さん。仕事が趣味で好きだからこそ、製品をとことんまで考え抜くのも苦になりません。「でも従業員は大変ですね」と言いますと、一冊の本を取り出されました。なんと小学校の教科書。5年生の社会の教科書に「中小企業の優れた技術について考えましょう」という教科があります。

その中でハードロック工業が取り上げられ、社員の一人が「100分の1ミリ単位の正確さが求められます。絶対にミスは許されません。人の命と安全を守る責任のある仕事に携われることに誇りを持っています」と発言していました。皆さん、やりがいをもって仕事に取り組んでいるのです。

水を引き寄せようとすると…(写真:ハードロック工業提供)

最後に、この会社の経営理念について触れます。ちょっと変わっていますが、「たらいの水の原理」と言います。たらいに入っている水を引き寄せようとすると水は逆に向こうのほうに流れていきます。相手のほうへ押し出せば、逆に水はこちらに流れてきます。つまりお客や社会に喜んでもらう努力をすればするほど、それは自分に返ってくるということです。そうした心の状態を保てば、良いアイデアが生まれ、ロングセラー商品を作り出せるのです。「アイデアは人を幸せにする」という若林社長の信念は、こうした相手を思いやる気持ち、「利他の心」から生まれているのです。

これからの若林社長の夢をお聞きすると、人に直接かかわる新製品の開発だそうです。医療関係から緩まないボルトの開発要請があるかと思えば、新素材での製作依頼があったりと大忙し。架橋に使われる130mmを超える巨大ナットから2mmの超精密なネジに至るまで、いまや3000種類に及ぶハードロックナットの用途は、無限に広がっているようでした。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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