このときの工場から現在の東大阪の本社に移転したのが1990年のこと。筆者が若林社長と知り合う少し前のことですが、若林社長は今でも「まるで会社が見違えるようでした」と述懐されます。
大企業との取引が増えると、その会社の海外への生産移転に伴い、必然的に海外からの引き合いも増えてきます。そして、この海外進出をさらに後押ししてくれたのが、現広島大学名誉教授の澤俊行先生でした。先生は当時、JRの「ねじ検討委員会」の委員長をしており、ハードロックナットもその検討対象でした。
論理的に戻り回転しないことが証明された
さまざまな解析の結果、どのような激しい振動衝撃を与えても論理的に戻り回転しないことが証明されました。この証明も、澤先生が世界屈指の解析のプロだからこそできたことで、大企業の技術スタッフ、ましてや中小企業でできるものではありません。
そして先生から、日本よりアメリカのほうが正しい評価がされる、アメリカの機械学会で発表しましょう、との連絡がありました。2005年コロラド州デンバーで開かれた学会で論文が発表され、ハードロックナットのクサビ構造が緩み防止に効果があることが立証されます。
「科学的お墨付き」をもらい、国際的な認知度も飛躍的に高まりました。お陰で経済産業省からお声がかかり、ボーイング社へ中小企業の技術を売り込むミッションに参加することもできました。
このように、大企業とのお付き合い、そして産学連携の研究が、中小企業のステップアップには不可欠です。いかに社外の人材を活用するかが、自社の看板商品をロングセラーにする大きなポイントだ、と若林社長は言います。
もうひとつ、若林社長が強調するのが特許のうまい活用法です。特許の有効期限は20年ですが、これではようやく市場に商品が浸透した頃に特許がなくなることになります。従って、その商品の特許をすべて一度に出さず、小出しにすることが特許期限を長引かせるコツです。ハードロックナットも、時期をずらして3回ほど改良を加えて特許を申請し、現在のようなロングセラー商品になっています。
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