話題の「ケトン食でがんが消える」は本当か 最新知識を第一人者が解説
もう一つ、ケトン食が注目されている理由は、スポーツへの効果です。
「ケトン体回路にしたい。ケトン体が燃えやすく、キチンとエネルギー源になりやすい体質になりたい」と、先ほど紹介した長友選手がコメントしたことから、スポーツに関心の高い人たちがケトン食に注目するようになりました。
けれど、ケトン体を効率よくエネルギー源にできる体質になるのなら、脂肪比率87%のケトン食をとる必要はありません。私の推奨するスーパー糖質制限食で十分です。
実際、長友選手が実践している食事も、本当の定義どおりのケトン食というレベルではなく、むしろ糖質制限食と呼ぶべき内容です。あくまでも、「ケトン体回路にしたい」という食事のようで、逆からいえば、私が著書などでご紹介している厳しめの糖質制限食(スーパー糖質制限食)を実行していれば「ケトン体回路になれる」ということでもあるわけです。
それに、実際のケトン食は、実行が難しいものです。脂肪比率が極端に高いため、味があまりよくないからです。
がんの患者さんでもないかぎり、ケトン食をする必要はないでしょう。
また、気をつけていただきたいのは、「ケトン~」「ケトジェニック~」をうたっている食事法のなかに、ケトン生成レベルまでいっていないものがあることです。ケトン食を一般の方が実行するのは難しいという事情もあるのでしょう。1日の糖質量120~130g程度の緩やかな糖質制限では、ケトン体回路にはなれませんのでご注意ください。
そもそもケトン体とは何か
ケトン体という言葉は、日常会話で今まで使われることがあまりなかったので、よくわからないという人がほとんどでしょう。
ケトン体とは、わかりやすく言ってしまえば、脂肪酸の分解物で、人の身体のエネルギー源として毎日使われているものです。食品の脂質や体脂肪が体内で分解されて、ケトン体という小さな粒となり、細胞のエネルギーになるというイメージで理解してくださればいいでしょう。
甘い物を食べるとエネルギーになるので元気になるというイメージが定着しており、糖質が分解されてブドウ糖になり、人のエネルギー源となることを知っている人は多いと思います。
しかし、科学的に解明されている人体の仕組みとしては、糖質よりもむしろ脂質のほうが人体を活動させているメインのエネルギー源であり、糖質はあくまでも補助にすぎません。
人体は糖質ではなく、脂質由来の物質をメインにして生きている。これが、争う余地のない科学的な事実です。
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